LUM No.77 (19.12.20)

「日米国際投資振興機構」はただちに請求を認めよ!

被害を受けたベトナム人留学生が東京地裁へ提訴

 留学ビザから就労ビザへの変更時に、詐欺まがいのやり方で20万円以上だまし取られたとして、ベトナム人7名が12月16日、東京地裁へ提訴しました。

東京地裁前(19.12.16)

東京地裁前で訴える原告団(19.12.16)

 提訴当日の記者会見には、原告団からは、タンさん、ニヤットさん、アンさんの3名と通訳のトアンさんが出席しました。また、久保木太一弁護士(城北法律事務所)、藤原明弘弁護士(代々木法律事務所)ほか弁護団、原告を支援するLUMを代表して本多ミヨ子書記長が同席しました。

民法・職業安定法・消費者契約法違反は明らか

 記者会見で久保木弁護士は、日米国際投資振興機構(以下、機構)は、在留期限までに就職先を見つけなければならない原告らの心理につけ込み、日本の在留資格を取得できると信用させ、『訓練コース』への入会金として約10万円を支払わせたにもかかわらず、実際には訓練を行わなかったことや、『内定成功コース費用』としてさらに同額を支払わせながらも在留資格は取得できなかったことは、明確に民法709条(不法行為による損害賠償)や、民法96条(詐欺又は強迫)に該当することなどを明らかにしました。

 さらに藤原弁護士は、提訴に先立つ10月23日に東京労働局へ「職業安定法違反申告書」を提出したことを報告しつつ、機構の行為が職業安定法に明確に違反していることを明らかにしました。

「だまされて悲しい。がんばりたい」タンさん決意のべる

 本多書記長は、このような事態を根絶するためには抜本的施策が急務であること、そのためには、専門的技術的分野の募集はすべてハローワークを通すこと、多言語苦情受付機関を多数設けアクセスを容易にすることなど、政府がとるべき対策を求めました。

 原告団からはタンさんが、「夢を持って来日したのに、だまされてとても悲しい。在留資格を取れずに、泣く泣くベトナムに帰国した人も大勢いる。その人たちの分もがんばりたい。裁判所には公正な判断をしてほしい」と訴えました。


小さなタトゥーを理由に解雇は認められない
会社側が労働審判を欠席、東京地裁での争いへ

 LUM75号で紹介した台湾出身の女性Mさんの事件は、会社側が労働審判期日に出席せず、審判を終了させる旨の答弁書を提出してきました。これにより、労働審判から訴訟へ移行し東京地裁で解雇の有効性を争うことになりました。

 Mさんは試用期間中でしたが、試用期間中でも、使用者との間に労働契約が成立している点においては、本採用の場合と変わりません。ただ解約権が留保されているだけです。したがって「留保解約権の行使は、解約権行使の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認される場合にのみ許される(三菱樹脂事件 最高裁 昭和48.12.12)」のです。

 争点は、解雇理由が社会通念上相当として認められる客観的合理的な理由にあたるかどうかです。会社は、「ウエディング事業なので、ふさわしくない」「就業規則に禁止と書いてあり」「タトゥーを消すよう求めたがM氏が拒否した」「社会通念上相当である」と主張しています。

「禁止とわかっていれば、この会社に入らなかった」

 しかしMさんは、「一時の気まぐれや軽い気持ちで入れたわけではありません。家族特に祖母に係わるちゃんと意味のあることですから『消せ』と言われて消せるようなものではありません。面接の時にも何も言われず、就業規則は入社してからも見たことはありません。初めから禁止とわかっていれば、この会社には入りませんでした。今頃になって、タトゥーがあるから解雇なんて納得できません」と話しています。

 タトゥーは、文化として根付いている国もあり、ファッションとして入れる人もいます。個人の自由です。それが仕事上大きな支障を来すのかどうか、個別に判断されるべきで、たとえ就業規則に書いてあっても、解雇する合理的な理由にはなりません。


第19回定期大会を開催 新委員長に松澤氏を選出
大会後は恒例の多国籍料理で楽しく交流

 11月25日にLUM第19回定期大会を開きました。全労連から伊藤圭一常任幹事が来賓としてあいさつし、本多書記長の運動方針案等の提案をうけ、参加者による活発な意見交換が行われました。

 移住労働者を巡る情勢はますます厳しいものがあり、労働相談の内容もこれまでの解雇、労災、賃金未払等に加え、フリーランス契約など多岐に渡ることが報告されました。提案された議案はすべて採択され、次年度も頑張っていこうと決意を新たにしました。

 大会後は続々と外国人組合員や元組合員も交えて、懇親会が開かれました。バングラデシュ人シャハさん手作りのビリヤニ(インドの米料理)をはじめ、たくさんの料理がテーブルに所狭しとならび、楽しいひとときを過ごしました。

2 0 1 9 年 度 役 員

執行委員長  松澤 秀延
副執行委員長 (全国一般に選出要請)
書記長    本多 ミヨ子
会 計    (書記長兼任)

幹 事  菅沼 櫻子
     田波 紀夫
会計監事 上野 節子
     大角 繁夫

協力幹事 大熊 博(元東京地評)
     梶  哲弘(全国一般)
     久保 桂子(東京地評)
     黒田 健司(元国公労連)
     小林 雅之(公務公共一般労組)
     森  治美(全国一般)
     山口 文昭(元新聞労連)


前執行委員長 島倉昌二さんがご逝去

 昨年度までLUMの委員長を務めてこられました島倉昌二さんが、19年9月9日に逝去されました。島倉さんはLUM結成2年目の02年から役員を務められ、08年からは執行委員長として活動を引っ張ってこられました。

 ご病気になられてからも、抜群の労働法の知識を頼って、時々電話でアドバイスをいただいていました。ある日いつものように話した後、「実は明日から入院するんですよ」、「そうですか。では退院されたらご連絡ください。それまでは電話は遠慮します」と話したのが最後になってしまいました。

 島倉さんは労働者、分けても弱い立場の移住労働者に熱い心で接する方でした。会社の理不尽な対応に強い怒りを持つ方でした。本当に残念でたまりません。島倉さん、長い間ありがとうございました。心から感謝します。(本多ミヨ子記)

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