違法職業紹介は許さない
留学生の裁判が勝利和解
LUM77号でお伝えしたとおり、詐欺まがいのやり方で有料職業紹介会社から20万円以上だまし取られたとして、ベトナム人7名が19年12月に提訴していた事件で、4月16日に会社との間で和解が成立しました。
裁判に先立つ10月に提出した「職業安定法違反申告」に対しても、東京労働局から是正勧告が出ており、裁判がわずか4か月で解決したのは、この勧告も大きく影響しました。
7名の原告の内2名は就職先が見つからず、裁判途中で帰国せざるを得なくなりました。また、この事件は解決しても同様の会社は多数存在しています。外国人労働者を食い物にする違法有料職業紹介を許さないため、今後もがんばっていきましょう。
新型コロナで裁判の見通し立たず自主解決へ
本件をめぐっては、裁判所が職権和解をすすめ、4月13日にお互いの意見を出し合い、最終的な話し合いに入る予定でした。ところが、その直前には新型コロナの緊急事態宣言が出されるもと、DV事件や人身保護事件など緊急性のある一部の事件を除いて、すべての裁判期日が取り消しになってしまいました。
本件もいつ再開されるかまったく見通しが立たなくなり、新型コロナは短期間で終息する見通しもなかったことから、原告被告双方ともに早く解決したいとの考えで一致し、4月16日の早期合意となったものです。和解内容は非公表ですが、別記のとおり原告のみなさんが喜びの声をあげており、実質的にベトナム人留学生側の勝利といえます。
「多くの人がだまされるのを止めたい」ベトナム人留学生の思い実る
一方、この会社はかなり手広く経営展開をしていたので被害者の数も多いと思われ、「自分も被害にあった。いっしょにやりたい」とLUMを訪ねてきた人もいました。さらに大阪や神戸の被害者の中にも、会社を訴えたいと考えている人がいることもわかりました。新たな被害者を出さないためにも、勝利和解を大きなステップにしてたたかっていく必要があります。
とてもうれしい! 原告留学生のよろこびの声
◆会社のやり方をやめさせてよかった(Aさん、26歳・女性)
今回はありがとうございました。会社はベトナム人に仕事を紹介しますが、ビザがとれるかどうか考えないでお金を取っています。こういう会社のやり方をやめさせてよかったと思っています。
◆失ったお金を取り戻してうれしい(Nさん、30歳・男性)
私はいまベトナムにいます(仕事がみつからずやむなく帰国)ので、通訳のトアンさんを通じて訴訟の結果を知りました。完全に勝ったことをうれしく思います。私たちをたくさんの人が助けてくれました。すべての人に感謝しています。失ったお金をようやく手に入れて、良い結果が得られてとてもうれしいです。他の学生たちがこの会社にだまされることはもうありません。ありがとうございました。
◆外国人をもっとサポートしてほしい(Tさん、32歳・女性)
まず、支援してくれた弁護士、労働組合、ジャーナリストのみなさんに感謝します。
はじめて組合に行ったときからあきらめずに9ヶ月以上がんばりました。みなさんも協力してくれました。私は深く感動し、感謝しています。現在日本にはこの会社以外にも外国人を応援するといっている会社は多い、でも悪い会社も多いです。私は日本の法律や関係機関がこの問題についてもっと心配してくれることを望みます。日本で働きたい外国人がもっとサポートを受けられると悪い企業にだまされることはもうありません。よろしくお願いします。ありがとうございました。
◆トアンさん(男性・通訳)
おかげさまで解決できて良かったです。通訳というより、みんなの先輩として私から組合のみなさん、弁護士の方々にお礼を申し上げます。ありがとうございました。
(トアンさんの適切な通訳なくしてはスムーズに進みませんでした。とても助かりました)
新型コロナ 特別定額給付金10万円
仮放免者が排除されようとしている
新型コロナウイルス感染症経済対策の一つとして、お年寄りから新生児まですべての国民に、一律10万円の特別定額給付金が支給されています。住民基本台帳に登録されている日本人、外国人すべてが支給の対象となり、政府は「ホームレスでも、ホテルに泊まっている方は、そのホテルが了承してくれればそこを住居地として登録すれば受けられる。無戸籍者も登録すれば受けられる」(高市総務大臣の国会答弁)としています。
しかし一方で、難民認定がされていない仮放免者については、「住民基本台帳に登録されていないから、仮放免者には支給しない」との見解を示しており、これらの人々が除外されるおそれがあります。
特別定額給付金の目的にも反する
特別定額給付金の目的は、「人々が連帯して一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服」するためとされており、現実に日本に住み生活している仮放免者を除外することは、「連帯して一致団結」の目的に反します。コロナ感染が広がるなか、外出自粛を要請されて不自由な暮らしを強いられているのに、住民基本台帳に登録されていないからと10万円を支給しないのは認められません。
難民不認定の人たちは、母国での迫害から命からがらのがれて、日本に助けを求めてきた人たちです。そのうえ、日本政府の非人道的な施策にどれだけ苦しめられてきたか。仮放免者も家族も、何も悪いことはしていません。期限の無い入管収容から仮放免されても、働くことも許されていません。これ以上さらに苦しめることなど許されません。
やろうと思えばできる はじめから排除するな
どうしても住基登録が必要だというなら、仮登録でも一時登録でも方法はいくらでもあります。高市総務大臣の答弁にあるように、住居を持たない人や無国籍者など住民基本台帳に登録していない人にも特別定額給付金が支給されるのに、仮放免者を除外するのはまったく道理がありません。
LUMは、排除の仕組みを作らずに、日本に住むすべての人に、もれなく特別定額給付金10万円を支給することを強く求めます。
コロナで大変 外国人困窮者を救おう
移住連が「移民・難民緊急支援基金」を発足
LUMも加盟している「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)が、新型コロナで生活に困窮する移民・難民、外国にルーツのある人たちに経済支援するため、基金を立ち上げました。移住連は、基金の目標を2,000万円として、幅広く寄付を呼びかけています。
また東京・芝公園にある日新窟のNPO法人「日越ともいき支援会」には、4月末までに1,400人が支援を求めてきており、いまも多くのベトナム人が支援を求めています。こうしたもと、日新窟は物資・支援金を募っています。こうした活動にぜひご協力ください。
移住連の基金は、こちらのHPを参照してください。また、「日越ともいき支援会」への協力は、同会のツイッターを参考にしてください。
◆編集後記◆
みなさま、いかがお過ごしですか。LUMは現在、週2回の開局にしています。そんな関係で今号は紙面もコンパクトになってしまいました。
大きな記事が2つあります。ベトナム人留学生の裁判が和解で解決しました。本当に良かったです。実はこの会社、お金を払いたくないために計画倒産をするのではと危惧していたのです。原告のみなさんにも「もしかしたらお金はとれないかもしれない」と言ってあったのですが、本人達は「それでもいい。これ以上騙される人がいなくなれば」と言ってくれていたのです。そうならなくてほっとしました。
もうひとつは、新型コロナ特別定額給付金がこのままでは仮放免者などに給付されない問題です。なんとかして払わせたいと、松澤委員長や難民支援団体のみなさんといっしょに考えています。私は、これは人権問題、外国人差別問題だと思います。国会議員のみなさんの力も借りながら、できる限りがんばりたいと思っています。
ではみなさま、お元気でお過ごしください。(本多記)