LUM No.71 (17.9.15)

フィリピン大使館から感謝の盾が贈られました!

感謝の盾

フィリピン大使館からの感謝の盾

 7月30日(日)、フィリピン共和国大使館海外労働事務所主催の「2017年移住労働者の日記念のつどい」で、これまでのLUMの活動に対して感謝の盾が贈られました。贈呈式には本多ミヨ子書記長、田波紀夫幹事、山口文昭幹事が参加し、代表して田波さんが壇上でフィリピン大使から盾を受け取りました。とてもうれしいことです。

 この日表彰されたのは在日フィリピン友好協会5団体、関西で活動しているNGO、指宿昭一弁護士など計10団体・個人でしたが、労働組合はLUMだけでした。フィリピン大使館とはこれまでも協力しながら活動してきましたが、労働者権利擁護のためにさらに頑張らなくてはと思いました。

フィリピン大使館との連携は10年以上に

 LUM結成当初からフィリピン人の相談はたくさんありましたが、大使館と協力するようになったのは12~13年前だと思います。
 イメルダさんのことも忘れられません。帰国を前に大きな鉢植えのお花と感謝の手紙と多すぎるほどのカンパを持って事務所に来てくれました。「みなさんのご親切と優しい気持ちを忘れることはないでしょう。どこに行けばいいのか途方にくれている人々に援助の手を差し伸べているみなさんのお仕事はすばらしい仕事です」との手紙を読み、私たち一同大変励まされたものでした。

 大使館と連携すると通訳(フィリピンで言えばタガログ語など)の問題もなく団体交渉もやりやすいことが多いのです。フィリピン大使館との連携を大切にしながら、いろいろな国の大使館とも連携を強めていきたいものです。

フィリピン大使館との連携で5人は無事帰国の途に

 LUMにはいろいろな相談がきますが、これまでの中で休日がないという点ではこのケースが一番ひどいものでした。5人中3人は8年間、1人は4年間、1人は7か月間、入社してから1日も休みがないのです。お正月も2~3時間は働かされました。

 野菜をカットしてレストランなどへ卸す仕事だったのですが、日本人は当然休みで、5人だけ働かされたのです。社長も来ないというのですからひどいものです。大使館からの連絡で会ったのですが、5人ともとても明るくてそれもびっくりでした。

外国人技能実習生の拡大でどんな問題が起こるか?
~フィリピン大使館のみなさんと懇談会を開く~

懇談会

懇談会に参加したみなさん

 一般のフィリピン労働者だけでなく、技能実習生、EPAの看護士・介護士候補生、家事労働者そしてこれからは介護実習生も加わり、フィリピンから多く入国することが予想されるので、今後のかかわり方を含めて一度懇談しようということになり、1月20日に懇談会をもちました。

 LUMだけでなく、全労連、東京地評、医労連、神奈川労連や友好団体からの参加者も含めて16名参加、フィリピンの海外労働政策を知り、日本での問題なども出しあい、なごやかで有意義な懇談会となりました。

 


外国人技能実習機構に労働組合が誕生

 今年11月から技能実習法が施行されますが、いろいろ問題の多い技能実習法のなかで最大の改善点は「外国人技能実習機構」(以下機構)が創設されたことです。その機構の中に労働組合が誕生しました。「外国人技能実習機構労働組合」は国公労連に加盟し、約30人の組合員で今年3月6日に結成されました。

 新機構は、東京の本部と地方の8事務所と5つの支所で構成され、法務省と厚生労働省からの出向者を含め職員約300人の組織で、当該労組は今後新機構全体の組織化をめざすとしています。
 実習生の権利擁護のための仕事をする機構の中に労働組合が誕生したことは、なにより心強くうれしいことです。実習生の強い味方になってくれることと期待しています。


これはひどい!縫製業界で働く実習生の実態

 残業代が時給わずか400円から700円、土曜日は無給――岐阜県と愛知県の縫製業で働くベトナムから来た実習生の実態です。愛労連に持ち込まれた労働相談のごく一部です。
 政府は2010年の入管法改定時に「これからはすべて最賃制が適用されるので最低賃金以下で働く実習生はいなくなる」といいました。しかし未だに縫製業ではこんなひどい実態があります。

 単に最賃割れをしているというだけではありません。土曜日は無給、33時間以上の分だけ残業代を払うなど、二重三重の違法がまかり通っています。

 愛労連や岐阜県労連は大奮闘をしていますが、とても追いつけないほどの相談数です。縫製業界は下請け単価が大変安く、それがこの状況を引き起こしているのです。大企業の横暴が実習生を苦しめ、労働者の労働条件を引き下げているのです。許してはなりません。


技能実習制度について申立書をILOに提出

 今年もILOに「技能実習制度はILO29号条約違反であり、廃止されるべきである」という内容の申立書を提出しました。
 今年は特に技能実習法がこの11月から施行されるので、そのことによる問題点に多く触れました。

 ILOはこれまでに2回LUMからの情報提供を含めた申立に注目し、日本政府に「首都圏移住労働者ユニオンからこのような申立があるので、これについて説明せよ」と回答を求めています。日本政府はこれまで「労働者保護には国際研修協力機構」(JITCO)が当たっているので問題ない」と回答してきました。

 今年は「外国人技能実習機構が出来たので問題点はすべて解消する」と回答するのでしょうが、この制度は小手先だけの変更で解決するものではないので、毎年その時々の情報をいれながら出し続けます。

2つのILO条約の批准を拒否する日本政府

 ILOには労働者の権利、保護条約が189あります。なかでも「労働での基本原則と権利に関するILO宣言」で、(1)労働組合結成、団体交渉の権利 (2)強制労働の廃止 (3)児童労働の撤廃 (4)雇用や職業での差別撤廃 は4原則とされ、原則ごとに2条約ずつ、計8条約を基本労働条約(中核的労働基準)と定めています。

 全加盟国に批准を求める重要な条約ですが、日本はこのうち「強制労働の廃止」(105号)と「雇用と職業における差別待遇の禁止」(111号)の2条約を批准していません。批准していないのは加盟185カ国のうち105号で11カ国、111号で13カ国しかありません。加盟国の4分の3は、基本8条約をすべて批准しています。
 なぜ批准できないのでしょうか。

105号―国内法と矛盾すると強弁
 強制労働の廃止を定めた105号条約には、ストライキ参加者に対する制裁禁止も盛り込まれています。日本では公務員は、労働者の最も基本的な権利の1つである団体行動権(ストライキ権)が禁止され、それどころか公務員のストライキに刑事罰(3年以下の懲役)を定めています。

 105号はストライキに参加したことによる懲役は強制労働にあたるとされているのです。条約を批准すればその政策を推進するために国内法を整備する責任があり、国家公務員法、地方公務員法を改正しなければなりません。政府は懲役の脅しを持ってストライキを制限したいのです。未批准はわずか11カ国、先進国などと言えたものではありません。

111号―差別撤廃に消極的
 111号は、同一報酬を定めた100号と並び、差別待遇の撤廃を目指した条約です。人種、性別、宗教、政治的見解などの差別を禁止し、雇用、職業での機会・待遇の均等を求めています。憲法で差別は禁止されているのですから、批准できないはずはないのですが、批准すると今実際にある差別を解消するための法律を作らなければならないから批准しないのだと考えざるを得ません。差別撤廃に消極的、差別を容認していると世界から見られてもしかたがありません。未批准はわずか13カ国です。

長時間労働を是正するならILO条約を批准せよ

 日本は8時間労働を原則とした1号条約をはじめ、労働時間に係る条約は1本も批准していません。いま安倍内閣は「働き方改革」の1つとして欺瞞的にも「長時間労働の是正」を掲げていますが、それなら直ちに10以上ある労働時間に関する条約を批准すべきです。 

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