LUM No.80 (21.1.15)

2021年
情勢の変化に流されず着実な前進を

善意のマスク3000枚!
支援カンパもたくさんいただきました

 前号で呼びかけたクルド難民の皆さんへの資金カンパとマスクカンパ、多くのみなさんからご協力いただきました。特にマスクカンパは、予想を大きく上回る3千枚のマスクが寄せられ、感激しています。

 1箱50枚入りの不織布マスクを何箱も送ってくださった方、ご自分や配偶者の方が手作りしたマスクを送ってくださった方、周りのお知り合いに呼びかけていっしょに送ってくださった方、何回も送ってくださった方、マスクの他にお菓子やマスク入れやタオルなどを入れてくださった方もいて、本当に多彩でゆたかなマスクが寄せられました。もちろん不要品のアベノマスクもたくさんいただきました。

 「東京民報」が取り上げてくれたことや、東京地評の定期大会で呼びかけたこともあり、いろいろな方々・団体から送っていただきありがたいことでした。

支援・マスクカンパに添えられていた一言
たくさんの中のほんの一部をご紹介します

・先が見えない中、不安いっぱいの移住労働者のみなさんに少しでも力になるとうれしいです。

・娘が開いている陶芸教室の生徒さん60人に呼びかけました。これからも届くと思いますので、また送ります。

・東京民報に載ってから、すっかり遅くなりました。用を足さないのではないかと思いつつ送ります。カンパの金額は気持ちです。何かの足しになれば。

・都内在住のOLです。本当にささやかで申しわけないのですが、役立てていただければと思います。

*   *   *

支援カンパ他いろいろ、ありがとうございました

 支援カンパを多くの方が送ってくださいました。領収書をお送りした方がいいのかどうか迷いましたが、わざわざ「領収書、お礼、不要です」と書いてくださった方もいて、お出ししないままになりました。

 いただいたカンパは、すべて間違いなくクルドを知る会にお渡ししました。機関紙をお送りすることで、お礼に代えさせていただければと思います。

 また、お菓子やコーヒー、子どもの喜びそうなおもちゃなどいろいろなものを一緒に入れてくださった方、本当にありがとうございました。感謝でいっぱいです。
(書記長 本多ミヨ子)

「クルドを知る会」の松澤さんからお礼のメッセージ

 多くの皆様からマスクをいただき、感謝申し上げます。特にクルドの子供達が大喜びしています。日本人の子ども達は親の手作りマスクを学校に持っていきますが、クルドの親はマスクを作ってくれないばかりか、持たせない親もいて、コロナ禍での授業ですから、マスクがない子は肩身が狭かったようでした。

 学校にいろいろな色のきれいな手作りマスクをしていくと、友達にちょっと自慢気に話が出来ると大変喜んでいます。また「日本人ってやさしいね」と言った子どももいて、うれしいことでした。

 日本では居場所がないクルド難民者は身を寄せ合い生活していますので大変喜ばれました。厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。


仮放免者の就労を可能にするための制度創設を
埼玉・川口市長が法務大臣に要請

 埼玉県川口市の奥ノ木信夫市長が、昨年12月23日、上川陽子法相と法務省で面会し、仮放免者の就労を可能にする制度の創設を求める要望書を手渡しました。

 川口市は隣の蕨市とともに、全国最多規模(500人)の仮放免者が暮らしています。川口市で暮らす多数のクルド人が国の入国管理制度によって収容施設から仮放免されても、「就労が認められず困窮している」として、要望書を提出したのです。「上川法務大臣は、深刻に受け止めていると応じた」と報道されていますが、もしそうなら早急に対策を立てるべきです。
 
 川口市長は、仮放免者について「就労できない状態で拘束を解かれ、不安定な生活を余儀なくされている」と指摘した上で「最低限の生活維持ができるよう就労を認める制度を構築するよう、また健康保険などの行政サービスについても、仮放免者に提供することの可否を国の責任で判断すること」を要望しました。まったくもっともなことです。
 
 仮放免者は就労できないことでどれだけ苦労しているかしれません。健康で、家族の生活に責任をもっている人が、働くことが出来ず支援者に頼って生活せざるを得ないなど、本当に辛くやりきれないと思います。
 理不尽に収容され、仮放免されても就労を禁止される、こんな状態は一日も早く改善されなければなりません。


入管の長期収容は「国際人権法違反」
国連人権理事会の作業部会が日本政府に意見書

 長期拘束が日常化している日本の入国管理収容制度について、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会が、「国際人権法に違反している」との意見書を日本政府に送ったことが明らかになりました。長期収容されていた外国人男性2人の訴えを受け、作業部会が調べていたものです。

長期収容者2人が19年10月に通報

 2019年10月に国連に通報したのは、難民申請中のトルコ国籍でクルド人のデニズさん(41)とイラン国籍のヘイダー・サファリ・ディマンさん(51)。計4~5年にわたって仮放免と再収容を繰り返す入管の運用が、国際人権法が禁じる「恣意的拘禁」にあたると主張していました。

国際法違反との指摘は初めて

 昨年9月23日付で意見書をまとめたのは、国連加盟国の人権順守を支援する国連人権理事会で、人権問題や関連法に知見のある学者や専門家らをメンバーに構成されています。作業部会が日本の入管収容を明確に国際法違反であると指摘したのは初めてです。

収容の必要性や合理性の検討なし

 日本政府からの回答や2人の反論をもとにまとめられた意見書は、2人が理由や期間を告げられないまま、10年以上にわたって断続的に6カ月~3年の収容を繰り返された、日本の出入国管理法が収容期間を定めておらず、収容の必要性や合理性も検討されていないと指摘、こうした措置は「法的根拠を欠く恣意的な収容」と結論づけ、国際人権規約などに違反するとの判断を示し、日本政府に入管法の速やかな見直しを要請しました。

日本政府はただちに改善を!

 組合がこれまでもたびたび指摘してきたように、入管に収容されている人たちは犯罪者ではありません。裁判を受けることもなく、収容期限が決まっているわけでもなく、担当者の裁量で収容したり仮放免したりなど、法治国家としてあってはならないことです。日本政府は、国連の意見書にしたがって、直ちに改善すべきです。


難民になったこと、日本人と結婚したことが罪ですか!

出入国法改悪案の国会提出がねらわれる

 同じ収容施設での長期化を問題にしているのに、国連の意見書と日本政府の考えは真逆の方向を向いています。
 国連は、裁判なしの無令状収容や無期限収容、必要性が検討されず原則子どもを含む全員を収容する全件収容を人権侵害だと断じているのです。

 それなのに日本政府は、「長期収容者が悪い」「罰則を明確にすれば退去強制命令に従うだろう」と考えているのです。冗談ではありません。誰が好き好んで長期収容されているものですか。退去命令に従わないのは理由があるからです。

 長期収容者の多くは、難民で帰国すれば身に危険がおよぶ恐れのある人や日本人
と結婚して家族的つながりが出来た人です。強制帰国させるのではなく、在留特
別許可を認めるべきなのです。
 これまでも日本は人権後進国でした。国連からの意見書が出た今、こんな法案を絶
対通すわけにはいきません。力をあわせて阻止しましょう。


最近の労働相談より

遠方への転勤を断ると退職を強要

 Hさんは31歳の若いお母さんです。モンゴルから留学生として来日し、学校を出た後日本のIT会社に就職しました。日本で知り合ったモンゴル人男性と結婚し、小学生の7歳の子どもがいて充実した毎日を送っていました。

 昨年、コロナ禍の影響でテレワークになり、その後12月に休業してくれといわれましたが、休業補償は出るということなので安心していました。

 ところが12月8日、突然「来年1月4日から神戸本社へ行くように」と言われびっくり。夫は自宅近くで働いているし、小学1年生の子どもがいるから、神戸に行けるわけはありません。「行けません」と言うと「じゃあ、辞めるしかないね。正社員は転勤を命じられたら断ることはできないからね」と言われ辞めるしかないと思い、「辞めますけど、理由は会社都合にしてください」と言うと「自分が神戸に行けないから辞めるんだから、自分の都合でしょ」と取り合ってくれませんでした。

 会社都合と自己都合では、ハローワークに行ったときいろいろ違うとわかっていたHさんはがんばりました。知り合いに相談し、LUMに相談に来たのです。
Hさんは、組合の指示に従い「退職理由は、神戸への転勤を命じられたが、行けないため」との退職届を書き、それを会社に提出しましたが、会社はこれを受け取らず、「一身上の都合で退職する」という書類を作り、それにサインするよう迫りましたが、Hさんはそれを断りました。

 組合は「このケースはコロナ禍を利用したパワハラ、退職強要」として、団体交渉の申し入れを行いました。


コロナ禍のもと交流会はやむなく中止
LUMが第20回定期大会を開催

 昨年11月25日(水)、LUM第20回定期大会が組合事務所で行われました。毎年日曜日に開催し、現組合員や以前問題を解決した元組合員とその家族が多数参加して近況を語り合い、励まし合う貴重な楽しいつどいだったのですが、今年はコロナ禍で、大勢で集まってパーティーをするなどもってのほかという状況であり、交流会はなし、定期大会のみ開催となり、大変残念でした。

 最初に全労連雇用・労働局長伊藤圭一さんから「この組合の活動は、日本の労働運動の良心を示している活動」との心に残る来賓挨拶を受け、その後本多事務局長が移住労働者をめぐる情勢、一年間の経過報告、次年度の運動方針案提案を行い、討論に入りました。

 移住労働者をめぐる雇用情勢は大変厳しくなっており、特に解雇、休業指示、シフト減がほとんどの飲食関係で働く移住労働者にのしかかって、生活を脅かしていること、そしてそのような中でビザの更新に不安を持っていることなどから、労働相談も対会社だけではなく、政府の支援策や入管のビザ関係の特例措置まで多岐に渡ることが報告されました。

 相談者にとって労働組合にたどり着いたことがこれからの支えになっているケースも多く見られ、1つ1つの相談にていねいに対応することの重要性が話しあわれました。提案された議案はすべて採択され、次年度も頑張っていこうと決意を固めあい、終了しました。


書籍紹介

「ルポ入管 絶望の外国人収容施設」

《平野雄吾著 ちくま新書・税込価格1,034円》

 2014年カメルーン人男性が医師の診察を受けられず、東日本入管センター内で死亡。2018年同センターでインド人男性が自殺。翌年大村入管ではハンストによりナイジェリア人男性が餓死した。いったい入管施設で何が起きているのか。東京五輪や外国人労働者の受け入れ拡大に合わせて、在留資格のない外国人の取り締まりが強化され、次々に入管施設に収容されている。2019年に出入国在留管理庁へと格上げされ、ますます大きな権力を振るう「入管」の実態に迫る。

著者紹介
ひらの・ゆうご 共同通信記者。前橋、神戸、福島、仙台の各支社局、カイロ支局、特別報道室外信部を経て、2020年8月からエルサレム支局長。「入管収容施設の実態を明らかにする一連の報道」で2019年平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞を受賞。

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