LUM No.69 (17.1.15)

2017年 年頭にあたって

排外主義になんか負けない 多文化共生こそ進むべき道

 米大統領が強烈な排外主義を打ち出しています。今年はヨーロッパの多くの国で首長選挙が行われる予定で、マスコミは移住者や難民排除の政策を掲げている政党の代表が首長になる可能性を予想しています。日本では安倍首相がこの時とばかりその方向を強める危険性があります。日本にそんな風潮がはびこることを許すわけにはいきません。

 私たちは労働相談を通していろいろな国の人たちと知り合い、国籍や宗教は違っても、いっしょうけんめい働き、家族と共に幸せになりたいと願いつつ生活していることになにも違いはないことを知っています。それぞれの文化を尊重しながら共生していくことこそ本来の姿であり、私たちの願いです。

 今年も元気にがんばっていきましょう!


LUMが第16回定期大会を開催

 16年11月20日の日曜日、首都圏移住労働者ユニオンの第16回定期大会と交流会が開催されました。コックさんの組合員などは日曜日も仕事でなかなか参加できないのですが、20名以上の参加者があり、会場となった組合事務所はいっぱいでした。

 全労連の伊藤圭一常任幹事の連帯あいさつを受けた後、本多書記長より外国人労働者をめぐる情勢、活動報告、運動方針案の提案がありました。情勢では、政府は外国人労働者の受入れを拡大しているが、その多くは人手不足の職種への安価で手軽な労働力の補充であり、生活者としての受入れではないこと、これまで「単純労働」として受入れを拒否してきた分野の労働者まで「戦略特区」や「特定活動」という在留資格で受入れ、雇用主変更を基本的に認めない働かせ方を強いていること、このままでは人権侵害が多発する恐れがあることが強調されました。

 報告・討論では、相変わらず解雇と賃金未払いが多く、特にインド料理店のコックさんからの労働相談が多いことや、自分の問題をLUMで解決した労働者が、後日、友人を連れて相談に訪れることが多く、LUMが頼りにされていると報告され、すべての議案が採択されました。

 大会終了後は、お楽しみの多国籍料理の交流パーティーでした。組合とのかかわりや現在闘っている問題などを語り合い、以前組合で問題を解決したバングラデシュ人のシャハさんお手製のチキンカレーをはじめ、ナン、稲荷ずし、サンドイッチ、ピザ、餃子、ボリュームたっぷりのサラダなどがテーブル一杯に並び、みんな大満足でした。


問題点を残して技能実習生「保護」法が成立
~ 附帯決議を力に待遇・諸権利の前進を ~

 16年11月18日に技能実習生「保護」法が成立しました。「保護法」と言いながらその中身は実効性に乏しく、問題点が解決されることはありません。確かなことは実習生数が飛躍的に増加することです。より多くの人権侵害が懸念されます。参議院審議の中で、仁比聡平議員(共産党)はブローカーの介在や賃金未払いなどを鋭く質問し、次々に問題点が明らかになってきました。これは附帯決議にも大きく反映しています。

附帯決議が衆参合わせて36本もついているということは、この法律がいかに問題点が多いかを示しています。審議の中で次々に問題や懸念が指摘され、それを少しでも緩和しようと付されるのが附帯決議です。法的拘束力はありませんが、運動の中でこれを生かすことはできます。「国会で約束したではないか」と迫っていきましょう。

■附帯決議の一部

(過労死について)
参議院:政府は、長時間労働により過労死が疑われる死亡事案が発生した場合において、国外に居住する遺族による労災申請を円滑に行うことが可能となるよう、遺族への必要な支援を行うこと。

(労働時間について)
参議院:政府は、労働時間の実態を把握するため、技能実習生の労働時間に関する調査を実施するとともに、長時間労働の是正に向けた措置を講ずること。また、本法の基本方針において、違法な時間外労働など労働時間に係る労働法令違反が行われることがないよう定めること。

(技能実習生の待遇について)
参議院:政府は、技能実習生が負担する食費及び居住費その他強制・半強制的に徴収される手数料等の把握に努めるとともに、休日、休暇、宿泊施設等の技能実習生の待遇について日本人と不当に差別されることのないようにする等、技能実習生の権利が確実に保護され、適正な技能実習が行われることを定めること。

(介護職種について)
衆議院:追加後3年を目途として、その実施状況を勘案して、必要があると認めるときは、検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。
参議院:本法の施行後、介護従事者の適切な処遇の確保や介護のサービスの質の担保等の課題が生じていることが確認された場合には、技能実習の対象職種の見直しを行うこと。

(強制帰国について)
参議院:政府は、技能実習生が実習期間の途中でその意に反して帰国させられることのないよう留意すべきこと、技能実習計画の実施途中で技能実習を注視して帰国する場合については、原則、事前に届出ることを定めること。

過労死問題は大きく前進

 LUMが実習生問題の中でも特にこだわって問題視してきたのは、実習生の死亡についてでした。対策を検討していましたが、なかなか有効な手段がとれないでいた時、下記ニュースが飛び込んできました。
 こうした実態が国会審議にも大きな影響を与え、附帯決議にも反映されています。これで今後の運動は大きく前進します。この事例が全国に普及することを熱望し、LUMもなお一層がんばります。

■外国人実習生の過労死 労基署が遺族に労災申請を促す(報道記事より)
 外国人技能実習生として岐阜県の鋳造会社に勤務し、14年に死亡したフィリピン国籍のTさん(当時27歳)について、岐阜労働基準監督署が16年8月、長時間労働が原因の過労死として労災認定した。
 Tさんは、14年1月末から3か月間、1か月に96~115時間もの残業をしていた。労基署は会社への立ち入り調査を実施した結果、労災に当たると判断し、遺族に書類を送り労災申請を促していた。


国際人権活動日本委員会が各省庁交渉 世界人権デーに連動して行動

 LUMも加盟している「国際人権活動日本委員会」は16年12月8日、宣伝行動と省庁交渉を行いました。国際人権活動日本委員会は、12月10日の世界人権デーに合わせて毎年宣伝と省庁交渉を行っており、LUMも毎年参加しており、今年は総務省前の昼休み宣伝から本多書記長が参加しました。

 総務省前のリレートークでは、日本委員会議長の発言の後、治安維持法国賠同盟、国民救援会など8名が発言し、それぞれが取り組んでいる課題は人権を守る運動であることが訴えられました。本多書記長は、技能実習生の人権侵害について制度上と実態から発言しました。

 午後の外務省交渉で本多書記長は、「技能実習制度は国際的に人身取引だと批判を受けているが、外務省に人身取引という認識はあるのか」「外務省としてでは答えにくければ、あなた自身にその認識はあるのか」と追及しました。
 対応した外務事務官は困りに困って返事ができない状態だったので、本多書記長は「答えられないと言うことはその認識はないということだ。外務省がその姿勢では、他の省庁が国際感覚をもてないのは当然だ」と厳しく指摘しました。

 法務省交渉では国際的に批判を受けていることを述べた後、「技能実習制度をどのように考えているか」と質しました。対応した国際室長は、「国際貢献のための制度であるが、一部の制度の主旨を理解しない雇用主のためにいろいろな問題が起きていると理解している」と、国会の大臣答弁で聞き飽きた答えでした。
 以前からわかっていたとはいえ、外務省や法務省がこのような姿勢ではいくら「保護法」なるものを作っても本質は何も変わらず、技能実習制度は廃止しかないことがますます明確になりました。

■世界人権デーとは

 「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」で始まる「世界人権宣言」が、1948年12月10日、パリで行われた第3回国連総会で採択されたのを記念して1950年の国連総会で記念日とされ、国連は、すべての加盟国にこれを記念する行事を実施するよう呼びかけている。日本では、この日を含む形で直前の1週間が「人権週間」に指定されている。


外国人家事支援労働者 東京都が受け入れを決定

 東京都は16年9月、国家戦略特区を活用して家事支援労働者の受入を決めました。神奈川県(下記)、大阪府についで3例目となります。この制度はセクハラ・パワハラをはじめさまざまな問題が発生する恐れがあり、今後も目が離せません。

 神奈川の受け入れ企業・予定人数(17年1月現在)
   (株)ダスキン      4名
   (株)パソナ                25名
   (株)ポピンズ              5名
   (株)ベアーズ              4名
   (株)ニチイ学館        15名
       *受け入れ労働者の国籍はいずれもフィリピン


最近の労働相談より

 このところ、あらぬ疑いをかけられ損害賠償を請求されているケースが立て続けに入っています。1件は飲食業で、お客さんに架空上乗せ請求をしてお店には本来の飲食代しか入れず架空分を着服したというもので、請求額は約800万円、本人が退職を言い出してから請求が来たもので、証拠はないのに「払わなければ裁判に訴える」と脅かしています。

 本人は「そんなことをしていないのは自分が一番良く知っている」と平然としていますし、組合も「裁判をやるやらないはそちらの自由ですからどうぞおやりください。ただしその場合はこちらも対抗手段を執ります」と回答しています。これまでのところ、裁判をおこす気配はありません。

 もう1件は、さらに深刻です。会社での立場を利用して取引先会社にリベートを要求し、正規の取引金額は会社の銀行口座に、リベート分は個人口座に支払わせたというもので請求額は約3,400万円。本人はまったく身に覚えがなく、もちろん口座にも振り込まれていないので潔白は明らかなのですが、請求金額が多いことと15年以上働いてきた会社から犯罪(背任罪)を犯していると言われていることに大変なショックを受け、本人だけでなく家族もうつ状態におちいっています。

 弁護士を通して証拠を出させたのですが、「○○から聞いた」「△△もこう言っている」というものばかりで証拠らしい証拠はありませんでした。そのうえ、会社はこれを理由に懲戒解雇をしてきたのです。組合は直ちに解雇撤回を申し入れましたが、会社は聞こうとしません。

 両ケースとも名誉毀損に当たると考えています。確たる証拠もなく犯罪者扱いするなど許せることではありません。今後も経過をお知らせしますので注目してください。

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