LUM No.79 (20.7.31)

コロナ禍で困難にさらされる外国人労働者

 新型コロナが猛威を振るっています。政府の無策は目を覆うばかりで、このままでは感染者が格段に増えると言われる秋冬にはどうなってしまうのか、そら恐ろしい気がします。

 LUMにも、コロナと関係する相談が増えてきました。業績悪化を理由とした雇い止め、休業させておいての突然の解雇など、いずれも深刻な生活破壊を引き起こしています。

(相談事例1)中華料理店の調理師だったTさん(中国人)

 都内の中華料理店で深夜のシフトに入って19時から29時(翌朝5時)まで働いていたTさん(42歳・男性)は、4月6日店で熱を測ったところ36.8度℃あり、高いと判断され(平熱は36.2℃位)、その日から2週間休むように言われました。

 その後すぐ平熱になったので店に連絡しましたが、緊急事態宣言の発令に伴い店は日中のみの営業となり、深夜営業は自粛することになったので、仕事はできないと言われました。その後なんの連絡もなく、賃金はまったく払われませんでしたが、貯金を取り崩してなんとか生活していました。

何の連絡もなく何か月も休まされて、いきなり「もう社員ではない」

 でもさすがに逼迫してきたので、友人に聞いて休業支援金を申請することにし、会社に休業の証明を頼みに行ったとき、「あなたはもう社員ではない」と言われてびっくり、何か月もなんにも言わずに休ませておいて、いきなり「もう社員ではない」はあまりにもひどいと7月にLUMに相談にきました。組合がTさんのタイムカードと賃金明細書を比べたところ、残業割増がついていない、深夜手当が正しく支払われていないなどが判明しました。

(相談事例2)インドレストランのコックだったMさん(インド人)

 Mさん(41歳・男性)は、2018年2月から毎日9時30分~22時(休憩2時間)、月26~27日働いてきました。支給された賃金は定額で14万円、ここから所得税、住民税が引かれていました。

 政府の緊急事態宣言で、東京都千代田区にある店は4月10日から営業を自粛しました。ビザの更新が心配になったMさんが社長に聞いたところ「心配ない」と言われ安心して休業していました。

ビザの手続きせず、アパートの鍵も取り上げ

 7月半ば、インドに帰ることになった友人を送って、成田空港に行き、インディア空港会社の人と友人が揉めて、そばにいたMさんも住基カードを出させられました。誰かが店に連絡したらしく、社長は「ビザの手続きやらない」と言って、それまで他のコックと一緒に住んでいたアパートの鍵を取り上げました。

いま外国人労働者支援に何が必要なのか?

日本経済を共に支える大切な友人として遇すべき

 現代人がこれまで経験したことのない感染症とのたたかいの中で「非常時には最も弱い人にしわ寄せがいく」ことを、痛感させられます。外国人労働者はそのうちのひとつでしょう。社会的セーフティーネットが機能していないとあらためて思わされます。
 困難ななかでいま何が求められているのか? 思いつくままにあげてみると・・・

その1 多言語相談窓口を急いで整備すべき

 このような緊急事態になるとつくづく思うのは、多言語相談窓口の少なさです。これまでも指摘されていることですが、外国人は困ったときどこに相談に行ったらいいかわからないのが普通です。

 話すことはできても書くことができない外国人はたくさんいます。それなのに各種申請書が日本語しかなく書くことができない、多少の日本語はできても言い回しが難しくてどう書いたらいいのかわからない、そもそもどんな支援があるのかわからないなど、よく聞く話です。

 地方行政の中に外国人住民との共生を位置づけ、多言語相談窓口を多く設け、それを外国人住民にわかる言葉で知らせる必要があります。

その2 非常時には生活保護の柔軟な運用を

 生活保護は日本人にとっては権利です。しかし外国人には恩恵でしかありません。各地方自治体に運用は任されており、地域によって大きな差があります。

 永住、定住など「身分」によって与えられている在留資格はまだ受けられる可能性(あくまで可能性です)がありますが、「専門的技術的分野」や「留学」などは、ほとんど受けられません。生活保護は最後のセーフネットであり、日本人なら最後は生活保護を受ければ何とか生きられます。しかし外国人はこのネットから外されているのです。

 今回のような非常時には柔軟に運用するべきです。生きていかなくてはならないのですから。

その3 感染防止を徹底して再入国を認める

 現在政府は感染防止の水際作戦として、一度出国した人の再入国を認めないという措置を執っています。これは永住者でも日本人配偶者でも同じで、母国で親が重い病気になり最後に息子に会いたがっているという連絡がきた場合でも、一度出国すると帰ってこられないことになり、泣く泣く諦めた人もいます。「父親が亡くなったと連絡がきたが帰れない」と電話口でがっくりしていた組合員がいました。感染防止を徹底した上で、再入国させるべきであり、非人道的で理不尽な施策だと考えます。


違法有料職業紹介でさらに10人以上が相談に
ベトナム人事件が解決したばかりなのに

 今年4月13日にベトナム人留学生をめぐる違法有料職業紹介事件が解決したばかりなのに、同じ被害を訴える留学生がすでに10人以上LUMに加入し、たたかうことになりました。今後、さらに増える見込みです。

 実はこの留学生たちが被害を受けた相手方となる団体は、前回の相手方の後継団体とも言うべき団体で、裁判の途中で前団体を残しつつ、ほとんどの役員、従業員、顧客を引き連れて新団体をあらたに設立し、前と同じ詐欺まがいの手口で留学生から20万円以上もだまし取っていたのです。

紹介された仕事は、介護ヘルパーや豆腐製造

 専門学校でメディカル外語学科卒業したHさん(女性)に紹介されたのは介護ヘルパーの仕事でした。実習では男性のお年寄りの着替え、朝食介助から始まり、1日中お世話をしました。介護の専門学校ではないため、すべて初めての経験でした。この施設の利用者には外国人は1人もいませんでした。

 国際ビジネス学科を卒業したBさん(男性)に紹介されたのは、「豆腐製造」の会社でした。面接の時仕事内容を聞くと「豆腐を作ってください」と言われがくぜん、この内容ではビザは下りないのではないかと心配でしたが、すでに22万円(税込み)も払っていたので出入国管理局(以下入管)に一縷の望みをかけて申請しました。

 しかし入管からきたのは「技術または知識等を必要とする業務が十分あるとは認められない」という不許可決定でした。他の方もほぼ同じ経過です。

詐欺の立証を視野に入れる必要も

 前回も「ほとんど詐欺だ。刑事告発も考慮すべきだ」と話しあわれたのですが、新型コロナ感染の緊急事態宣言の影響で、裁判がストップするなか、原告、被告双方の弁護士が話し合い、和解で解決となりました。こうした経過から、詐欺については見送らざるをえませんでした。

 同様の手口で留学生を苦しめている団体は多くあることが指摘されており、今回は単に被害額を取り戻すだけの闘いにしてはならないと考えています。詐欺行為を明らかにして社会的化して、この団体を廃業させること、刑事責任を追及することなども必要です。


編集後記
 コロナ感染症拡大が止まりません。地球温暖化が新しい感染症発生に大きく影響しているとか。なりふり構わず利潤追求に血道を上げた結果だとすれば、今後やらなければならないことはおのずと決まってくるはずですが・・・。安倍首相は言わずもがな、世界の指導者達の多くは学ぶ姿勢に乏しいようで先行き不安です。相談も増え忙しい毎日ですが、労働組合の必要性が明らかになってきたことも事実です。労働運動の改革にもつなげなければと思っています。(本多ミヨ子)

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