LUM No.83 (22.1.15)

2022年

コロナ対策を徹底させ 暮らしと健康を守り
改憲策動を許さず 今年も元気に 前向きに

 


17年ぶりに事務所を移転しました
LUM設立の地 東京労働会館へ

新事務所の全景

明るい新LUM事務所

 LUMの設立は2001年11月16日でした。東京労働会館6階の東京地評内に机1つを貸していただいて(無料でした。ありがたかったです!)、机1つFAX付き電話機1台でスタートしました。東京地評、全労連のご協力を得て、紆余曲折はありましたが徐々に発展してきました。

 運動の発展にともない手狭になり、池袋の事務所に移転してきたのが2005年1月でした。それから17年が経ち、机1つで出発した東京労働会館で、池袋の事務所とほぼ同じ広さの部屋を借りることができるまでになりました。運動の発展とともに、LUM設立の地に戻ることができることをうれしく思い返しています。

■東京労働会館には頼もしい仲間がいっぱい

 東京労働会館には、東京地評をはじめ国際人権活動日本委員会、いのちと健康を守る東京センターなど、これまで折に触れて援助ご協力いただいてきた団体も入居しており、さらに運動が促進されることは間違いありません。さらなる運動の発展をめざして今後もがんばります。


ウィシュマさんのビデオ開示が明らかにしたこと
「未必の故意」=入管による殺人にほかならない
~ 遺族は21年11月に殺人容疑で告訴状を提出 ~

 21年3月、名古屋入管で死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が、命の火が消えるまで約2週間の入管内監視カメラ映像の一部が、同年12月に衆参法務委員らに開示されました。

 ウィシュマさん死亡の真相解明のため、遺族や関係者、野党各党が6か月以上にわたって要求し続けたことがやっと一部実現しましたが、開示されたのは13日分をたった6時間半ほどに編集したものでした。当局の都合のいいように編集したのではないかとの疑念もあり、真相解明にはほど遠いものでした。それでもビデオから見えてきたものは「未必の故意」つまり殺人に他ならないものでした。

 ビデオを見た野党の国会議員は、「ウィシュマさんはうなり声を何度も発し、インターホンで職員を呼び、『私、死ぬ』と苦しそうに訴えていた。断末魔のような声だった。見ず知らずの人でも助けようとする状況なのに、職員が何も対応しないことに衝撃を受けた」「繰り返し繰り返し『あぅぅ』『ああぁ』『あぅぅ』と苦しみ続けている状況が映し出されていた」などと口々に感想をのべました。

 また、医師免許を持つ議員は、「明らかに体調が悪いウィシュマさんに対し、職員や看護師が明るく『平気、平気』『大丈夫』と言うのに違和感があった。不調を訴える人を放置することは、医療機関や介護施設ではあり得ない」と言っています。

 10月に遺族らに開示されたビデオを見た駒井知会弁護士(ウィシュマさん遺族の弁護団)も、「職員がスプーンでウィシュマさんの口に食べ物を含ませるが、すぐ吐いてしまう。職員は間を置かず『はい次』と言って与え、また吐いてしまう。口から食べるのが難しい状態なのに食べさせようとすること自体、きわめて残酷に見えた」と語っています。

 ビデオ開示に先立つ11月9日、妹のワヨミさんとポールニマさんが、名古屋入国管理局の当時の局長や看守らに対する殺人容疑で、名古屋地検に告訴状を提出しました。名古屋地検はこれを受理し、殺人容疑で捜査が始まっています。


技能実習制度の見直しへ「思い切りバットを振る」
~ 法務大臣が年頭所感で公言、調査を開始 ~

 古川法務大臣の年頭所感(別掲)の具体化でしょうか、実習生が来日時に背負ってくる借金についての調査が始まりました。調査は1月~4月の予定で、技能実習機構が定期検査に合わせてそこで働く実習生に調査票を配り記入させるというやり方です。

 こんな方法で正確な情報が得られるか、はなはだ疑問です。事前に雇用主から「本当のことは書かないように」とか、「少なく書くように」などと言われていることが、想像に難くないないからです。

■小手先の改善ではなく、技能実習制度は廃止させよう!

 実習生一人一人に個々面接で実態を聞き出すことなしには、実態は浮かび上がってこないと危惧しますが、ともあれ「チャンスを逃さない」のは我々も同じです。今年こそ力を合わせて、この制度を必ず廃止しましょう。

(参考)古川禎久法務大臣の年頭所感(22年1月7日、要旨、抜粋)
 技能実習や特定技能、これらは、ちょうど今見直しの時期を迎えています。ならば、チャンスです。この際、大胆に見直し作業に取り組みたいと思います。
 技能実習制度には、本音と建前のいびつな使い分けがあるとの御意見・御指摘にも、正面から向き合わなければなりません。私たちは今、数十年に一度の大きなチャンスを迎えている、その自覚の下に、果敢に見直しを進めるのです。その際、大切なのは、制度の良いところも悪いところも率直に認める素直さ、潔さであり、改めるべきは改めるという誠実さです。
 口で言うほど簡単でないことは分かっています。けれども、もし私たちが、真に素直さ・潔さ・誠実さを持てるのならば、私たちにもう怖いものはありません。私たちは必ずチャンスをものにできるでしょう。チャンスは逃さない。私はこの1年、皆さんとともに、思い切りバットを振りたいと思っています。


最近の労働相談より

その1 機械で骨折しても入院費も手術費も払ってくれない

電話相談

相談を聞く本多書記長

 2018年から埼玉県戸田市の印刷会社で働いてきたインド人のKさん(42歳・男性)は、21年11月9日、安全装置のついていない製版用機械に手を挟まれ、右手人差し指と中指を骨折してしまいました。

 病院には上司である部長がついていってくれましたが、治療している途中で治療費も払わず部長は帰ってしまったのです。Kさんはそのまま入院し、11月12日にボルトを入れる手術を受け、1週間後には退院しましたが、この間会社からは誰も一度も来ませんでした。

 日本にいる親戚が駆けつけてくれ、治療費も払ってくれて退院できましたが、骨折した指では働けるわけもなく、会社の寮に帰っても食事洗濯も自分では出来ないのでその親戚の家に行きました。

 退院したこと、親戚の家にいることを会社に知らせましたが、何も言って来ませんでした。約1か月たった12月27日に部長から、「どこか住むところを探して。明日から来なくていい」と電話が来て、翌28日に20万円が振り込まれました。

 今後回復の様子を見ながら、ボルトを抜く手術をしなくてはなりません。思いあまって、親戚の人に連れられて組合に相談に来たのです。こんな理不尽なこと許されません。これから社長との交渉に入ります。

その2 13年も働いてきたのに「もういらない」

 インド人コックのSさん(48歳・男性)は、21年3月にインドに帰国すると、日本国内でのコロナ感染拡大のため、再入国できなくなりました。10月になってようやく日本に戻ってくると、レストランの店長から一方的に、「もういらない」と言われました。

 Sさんは、横浜市のインドレストランで2008年から働いてきました。13年もコックをしてきたにもかかわらず、このような仕打ちを受けるとは思ってもいなかったSさんは、あまりにも冷たい態度に悲嘆にくれていました。

 深く傷つき、もう横浜のレストランには戻りたくないというSさんですが、話を聞くと多額の残業代未払いがあることが判明しました。現在、代理人弁護士と交渉中です。

(解決しました!)裁判も辞さぬ構えで交渉、和解に持ち込む

 LUM81号でお知らせした世界的大企業でパワハラを受けていたインド人技術者のTさん、和解が成立し裁判に訴えることなく解決しました。執拗なパワハラでうつ状態に陥っていましたが、体調が悪い中でも「会社のやり方は許せない」と本訴も辞さない覚悟でした。 

 組合も団体交渉は無論のこと、病院への付き添い、弁護士との打ち合わせ、生活上のアドバイスなど全面的にサポートしました。会社は裁判になったら不利になると思ったらしく、代理人を通して和解を申し入れてきましたので、相談の上和解することにしました。Tさんはとても感謝してくれています。よかったです。


コロナ禍のなかLUM第21回定期大会を開催

 21年11月24日に第21回定期大会が開催されました。来賓として全労連から伊藤圭一雇用・労働局長、東京地評から柴田和啓副議長にご出席いただき、ご挨拶を受けました。

 本多書記長の経過報告では、相談はコロナがらみのものが多く政府の支援策が行き渡っていないこと、技能実習生の妊娠・出産問題、名古屋入管でのウシュマさん死亡事件など、人権に係わる重大な問題が明らかになった1年だったことが報告され、ついで来年度の運動方針案が提案され、全会一致で採択されました。

 昨年に続き今年も、大会後の移住者を含めた多国籍料理の楽しい交流会は諦めざるを得ず大会参加者だけでささやかに行いました。来年こそ東京労働会館で盛大に交流会をやりたいです。

2022年度役員
執行委員長              松澤 秀延
副執行委員長   (全国一般より選出)
書 記 長              本多 ミヨ子
会             計   (書記長兼任)
幹   事     大熊 博
                                      黒田 健司
                                      菅沼 櫻子
                                      田波 紀夫
                                      山口 文昭
会計監事                   上野 節子 
                                      色部 祐

協 力 幹 事
久保 桂子    (東京地評)
梶  哲弘   (全国一般)
小林 雅之    (公務公共一般労組)
森  治美    (全国一般)


知っているようで知らない難民のこと
難民支援協会のホームページで学んでみませんか

 「難民支援協会」(略称JAR)という団体を知っていますか? 母国を追われた難民が失った権利を回復することを目指して支援に取り組んでいる団体で、LUMも加盟している「移住者と連帯する全国ネットワーク」の一員でもあります。

 LUMはこれまでたびたび難民問題を取り上げてきました。世界の常識とはかけ離れた認定基準の厳格さ、認定率の低さ、決定までの時間の長さ、司法の判断を経ないで収容されることおよび収容期限が決まっていないことの非人道性、仮放免時の就業の禁止や移動の制限の不当性等々。

 でも、知っているようで知らないことがたくさんあるのではないでしょうか。「難民とは母国で政治的迫害を受けた人」だけと思ってはいないでしょうか。「難民」の定義も時代と共に大きく変わってきています。また「そもそもこんな人権後進国の日本になぜ来るのか、他の国に行った方がいいのに」と善意で思っている人もいるのではないでしょうか。こんな疑問があったら難民支援協会のホームページ開いてみましょう。「難民問題の今」がわかります。

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