LUM No.95 (25.5.10)

パレスチナに思いを寄せる展示イベント
『あたたかい家 in 松戸』に参加
来場者にパレスチナ支援ストラップを配布

 戦争がつづくパレスチナの人々を思い、「安心安全な住まいに帰り、それぞれが望む幸せな生活が送れるように」との願いを込めて開催された展示イベント『あたたかい家』。同じ思いの人たちと触れ合いたくて参加しました。

 会場にはパレスチナ在住のアーティストを含む112組の絵画やイラストが展示されていました。どれも平和への願いにあふれていて、胸のつまる思いでした。参加者は若い人(30代位)が多く、うれしい気持ちになりました。

 持っていったLUM作成の「支援ストラップ」を会場に置いてもらうことになり、声掛けもしていただけるそうです。(本多ミヨ子記)

○ふたごの家族(画:吉田尚令さん)
「ムハンマドさんと、亡くなったご家族、ジョマナさん、双子の赤ちゃんアーセルちゃんとアスィールちゃんを描きました。戦禍の中、決死の想いでジョマナさんは帝王切開で二人を出産しました。家族4人の和やかな幸せな時間があるはずでした」とのコメントが添えられていました。


クルド人に対するヘイトスピーチを許さない!
隠し撮りして「万引きだ」とデマをSNSで拡散

 ヘイトスピーチ解消法が2016年に施行されてからも、埼玉県県内の外国籍住民へのヘイトスピーチ(差別的言動)は後を絶ちません。
 昨今では、川口市と蕨市でヘイト団体による悪質なクルド人排斥デモが頻繁に行われる深刻な状況が続いています。また、街角で撮影されたクルド人の写真や動画を無断で転用し、クルド人による反社会的な活動があるかのような画像・動画を捏造した偽の情報がSNS上で拡散されることが増えています。

 川口市内の100円ショップ店内でクルド人の女児が隠し撮りされ、「万引き犯」として投稿されたケースでは、店側が万引き被害を否定したことにより、悪質なデマと判明しました。そのほかに、家族でケーキを囲む公園での楽しそうな様子の動画をSNSに投稿したところ、その動画を無断で転用され、「クルド人が公園の無許可占拠」「蕨市民公園での違法パーティ」などの中傷の言葉とともに拡散されたこともありました。

 クルド人へのヘイトが始まって2年近くになりますが、「いつかは自分たちも被害に合うと覚悟をしていました」と語るクルド人住民は、事実ではない情報に心を傷つけられ、平穏な生活も侵害されています。

ヘイトデモ差し止めと損害賠償をさいたま地裁へ提訴

 ヘイトスピーチを叫ぶデモにより平穏に暮らす人格権が侵害されたとして、一般社団法人「日本クルド文化協会」が「日の丸街宣倶楽部」代表の渡辺賢一氏に対して、ヘイトデモの差し止めと550万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。

 第1回口頭弁論が4月23日、さいたま地裁で開かれました。クルド人へのヘイトがエスカレートするなか、メディアからも注目を集めましたが、被告側の代理人は欠席し、結局、被告側の意見陳述は中止するという異常な事態に。
 次回口頭弁論は7月2日に予定されています。


育成就労制度の「基本方針」を閣議決定

 石破内閣は3月11日、新たに発足する育成就労制度にかかわって、運用の基本方針を閣議決定しました。27年6月までの施行にむけて、政府は基本方針をふまえつつ、各分野別の運用方針の年内中の決定をめざしています。

■わずか2か月の議論で方針案を取りまとめ

 24年の通常国会で成立した育成就労制度関連法では、基本方針等を作成するにあたっては「知見を有する者の意見を聴かなければならない」と条文に明記されました。これをうけて政府は、昨年12月に学者や労使関係者らで構成する有識者会議を設置、その後わずか2か月で基本方針案が取りまとめられました。

 有識者会議ではさらに検討をすすめ、今年12月には介護や建設、農業など各分野別の運用方針が決定される予定です。その際、各分野の人材不足の状況等を見つつ、産業ごとの受け入れ人数の上限を発表するとしています。

 また、厚生労働省のもと設置された有識者懇談会(以下、懇談会)では、育成就労計画の認定基準、転籍、監理支援機関や送出機関のあり方などが、有識者会議と並行して議論がすすめられています。

■分野ごとに1年から2年の転籍制限期間を設ける

 国会審議でも焦点となった転籍の制限期間について、基本方針では1年から2年の間で各分野別に定めるとしています。
 技能実習制度では3年間の転籍制限が実習生を縛り付け、それが多くの失踪者を生み出す要因にもなってきました。法律では「やむを得ない事情」のみ転籍を認めるとしていますが、その定義があいまいだったため、出入国在留管理庁は昨年11月、同僚をふくめたハラスメント被害、雇用契約と実態の乖離など、転籍が認められる具体的な事例を示すなど、制度の改善をはかってきました。しかしながら、失踪者が1万人近い現状の根本的な解決策と言えません。

 こうしたもと、育成就労制度の法案策定にあたって、転籍制限を1年に緩和することが議論されたものの、自民党の要望にもとづいて制限期間が2年になった経過があります。基本方針でも、「1年とすることを目指しつつも、当分の間、(中略)1年から2年までの範囲内」で設定するとしており、当初の原案にあった「(各育成就労実施者の判断で)転籍制限期間を1年とすることができる」との文言も、結果的には削除されました。

 転籍にともなって人材の都市部への集中を避けるため、基本方針は「労働者の権利保護等に十分配慮した上で必要な措置を講じる」としています。懇談会では、都市部への転籍は全体の2分の1以下に制限することも示されましたが、職業選択の自由が妨げられるとの意見もあり十分な議論が必要です。

■悪質ブローカー排除の徹底を明記

 来日にかかる多額の費用のために、借金を背負って働く技能実習生が数多くいます。東南アジアや中国など5か国の送出機関を対象に、厚労省が23年に現地で実施した聞き取り調査では、実習生を集める手段として約6割が「個人の仲介」と回答しています。その過程で、送出機関がブローカーから法外な仲介料を要求され、それが個人的負担となって実習生に重くのしかかっている実態も明らかになりました。

 基本方針では、送出しに係る費用を含めた情報の透明性の向上をはかるほか、関係機関の連携を強化しつつ「悪質な仲介事業者(ブローカー)等の排除を徹底する」と明記されました。あわせて、厚労省の懇談会では、送出機関に支払う費用を「日本で受け取る月給の2か月分まで」などの規制策も検討されています。

 本国からの送り出しにあたって、悪質業者の介入を許さないため、実効ある措置は急務の課題です。

■外国人労働者の生活と権利を守る制度を

 技能や技術の海外移転を目的に、「国際協力の推進」を掲げて93年に発足した技能実習制度は、対象職種がひろがるなかで、日本国内での人材不足を補う手段として利用されてきました。それとともに、暴力やパスポート取り上げなど技能実習生へのさまざまな人権侵害が問題視され、国際社会からは「現代の奴隷制度」などと厳しく批判されてきました。

 技能実習生は47万人に達し、19年に新設された「特定技能」の在留資格を持つ外国人労働者も、すでに20万人を超えています。建設や交通運輸、介護などの分野で、今後ますます人手不足が予想されるもとで、将来にわたって外国人労働者は日本経済に欠かせない存在となっています。

 一方で、永住資格に対する規制が強められ、収容所での不当な扱いなど権利侵害も後をたちません。また、昨年の難民認定は190人(認定率2.2%)にとどまるなど、根強い排外主義が外国人受け入れを阻んでいる現実があります。

 育成就労制度の目的が「人材確保と人材育成」である以上、何よりも外国人労働者労働者が安心して働けることを第一に考えた制度づくりが必要です。国会での十分な審議もなく、育成就労制度の関連法成立が強行された経過をふまえれば、制度の運用にむけては、当事者からの意見も聞きながら活発な議論が交わされることが強く望まれます。LUMでは、引き続き有識者会議等の動向に注視していきます。


本多書記長の労働相談日記

(その1)バングラデシュ人男性(コック)

長時間労働のうえ賃金不払い

 Aさんは、千葉県にあるインドレストラン&ケバブの店で、2023年9月からコックとして働いてきました。オーナーもバングラデシュ人で、店を2店舗持っていました。多くのインドレストランでは、15時~17時は店を閉じ、働いている人の休憩時間となるのですが、この店は閉じることがなかったので、ずっと働きっぱなしで休憩もとれませんでした。この店舗はAさんしかコックがいなかったからで、週1回の休み以外は、毎日13時間労働でした。

 毎月の出勤日数は最低でも25日、月300時間を超える勤務が24年12月までつづきました。なのにオーナーが約束した賃金は月わずか17万円。それも24年7月以降は一銭も支払われていません。しかたなくAさんは12月末で店を辞めて、LUMに相談に来たのです。未払い賃金を計算したうえ、賃金の不払い分をオーナーにきちんと払わせるよう準備を始めています。

(その2)フィリピン人女性(ホテル従業員)

客にまで暴言を吐くパワハラ責任者

 ともに日本人の夫を持つYAさんとYOさんは、品川区にあるホテルで清掃業務の仕事をしてきましたが、管理監督責任者のパワハラがおさまらないことから、職場を辞めざるをえませんでした。これまでにもパワハラに嫌気がさして、退職していった人は何人もいたとのことです。

 調べていくと、驚いたことにこの責任者(外国人男性)のパワハラは従業員にとどまらず、泊まり客に食事を届けに来たデリバリーの配達員はおろか、客にまで怒鳴りちらす始末。ネットに書かれたホテルの口コミ情報を見ると、耳を疑うような責任者へのクレームが山のようにでてきます。こんな人が長年責任者をやっているとは、不思議なホテルです。

 YAさんは、この責任者から「客のものを盗んだ」「アメニティを持って帰った」と身に覚えのないことを言われ、我慢できずに辞めました。パワハラどころか名誉棄損にほかなりません。一方、YOさんは24時間勤務を押しつけられ、交通費を不当に減らされていることもわかりました。

 二人からの相談にもとづき、さっそく会社側と連絡を取りました。提出を要求した就業規則を見ると、「職場のパワーハラスメントの禁止」「セクシャルハラスメントの禁止」「その他すべてのハラスメントの禁止」がはっきりと掲げられていました。

 組合では、この就業規則をよりどころにして、管理監督責任者の態度を追及していくことにしています。ハラスメントのない職場を作らせることはもとより、過去の名誉棄損にあたる行為を認めさせたうえで、会社側の対応を厳しく迫っていきます。

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