LUM No.70 (17.4.30)

 共謀罪法案が通ったらLUMはまっ先に監視対象に!

~ 「テロ対策」を口実に労働組合移住者を公然と監視 ~

 もし共謀罪が成立したら、間違いなく恐ろしい監視社会になります。なかでもLUMはいの一番に監視対象になるでしょう。名目だけでも「テロ対策」を謳っており、イスラム圏からの移住者を公然と監視することができるのですから。

 LUMに相談に来る人たちの中にはムスリム(イスラム教徒)の方がたくさんいます。まじめに働き生活している人たちです。テロ予備軍かもしれないなどと勝手に決めつけ監視するなど人権侵害です。

 そしてその人と接するLUMの役員やボランティアの人、LUMに出入りする労働組合や団体の人たち、それにつながる人、その家族や友人知人、警察がその気になれば監視対象は網の目状にいくらでも広がります。そのスタート地点にLUMはされるかもしれません。絶対廃案にしなければ!


「労災保険ではなく民間の保険を使え」という社長が多い

~ 問題多い建設職場の労災事故 ~

 最近、工事現場での労災の相談が増えています。そのすべてのケースで問題になっているのが「元請会社が労災保険に加入していないので、労災保険は使えない。元請会社がかけている民間の保険会社の保険を使え」という場合と、「元請会社に労災が発生したことを知られたくない。うちがかけている民間保険を使ってほしい」と実際に働いていた下請会社が言ってくる場合です。

 組合はそのすべてのケースで労災保険の適用をさせていますが、実際問題としてはモグラたたきのように、解決しても解決しても「労災保険未加入の元請」「元請に知られたくない下請」は後を絶ちません。何年も前から同じです。どうしてこんなことが起きるのでしょうか。どこが問題なのでしょうか。

建設業界特有の規定

 普通の事業であれば、労災補償は労働者を雇っている企業が責任を負わなければなりませんが、建設業、土木業などの場合は労働基準法で元請企業がすべての補償をすることになっています。それは当然と言えば当然です。その現場で起きたことはすべて工事を請け負った元請が負うべきです。大手建設会社はもちろん元請責任を自覚していますし、労災保険にも当然加入しています。労災保険未加入問題が発生するのは、元請工事も下請工
事も、両方を請け負う会社が多いのです。

ほんとんど下請、たまに元請仕事

 「うちはほとんど下請け仕事だが、たまに個人住宅の解体など直接請け負うことがある。だけど労災保険に入れば保険料を取られるし、たぶん事故などはないだろう。でも、もしものために民間の保険に入っておこう」という気持ちなのでしょうが、これは明らかに法律違反です。ましてや実際に事故が起きた時に、「労災保険には入っていないから使えない。民間保険で何が悪い」と開き直るなど論外です。

元請に知られたくない

 もう一つは、「労災事故を元請に知られると次から仕事をもらえなくなる」と心配し、「自分の会社が掛けている民間保険を使ってほしい」と頼んでくる場合です。この場合は、労基署に私傷病報告を出していませんので、あきらかな労災かくしです。心配はわかりますが、労災は無過失責任なので会社の責任になるわけではないことを話し、元請の労災保険を使ってもらうよう話します。

民間保険の申請は会社まかせ

 労働災害が発生した場合、労働基準監督署に私傷病報告を出すことが義務付けられています。これをしないと労災かくしになり法律違反です。しかし必ず労災保険を使って補償しなければならないわけではなく、企業が労災保険以上の補償をすることは認められています。ですから、本当に労災保険以上の補償をしてくれるのなら民間保険でもいいわけです。しかし中小企業で労災保険以上の補償をすることは難しいことです。

 そして何よりも問題なのは、申請が会社にゆだねられていることです。労災保険は本人申請ですから、会社が認めなくても申請できます。しかし民間保険は掛けているのが会社ですから、会社が申請をします。そのため、まだ働けない状況でも会社が申請を打ち切れば補償は受けられなくなります。最後まで労災保険で保障されることがどうしても必要なのです。


技能実習制度が変質 外国人実習生は50万超か?

~ 「技能実習法」の問題点を考える ~

 16年秋の臨時国会で成立した技能実習生「保護」法は、実習期間も人数も対象職種も拡大するという「技能実習生拡大法」ですが、詳細が明らかになってくるにつれて、問題点が次々に明らかになってきました。

 なかでも関係者を「そんなバカなことが!」驚かせたのが人数の拡大です。これまでの説明では「おおむね2倍程度」としてきたのに、法律ではそれを大幅に上回っています。これでは「国会をだました」と言われても仕方がありません。

「間違いじゃないのか」と疑うほどの大幅拡大

 これまで受け入れ可能な外国人技能実習生の人数は、「常勤者50人以下の企業は1年に3人まで」とされ、3人×3年で最大9人まででした。ところが今後は、企業規模によって細かく区分し、優良企業(内容は後述)に認定されれば5年間受け入れが可能となり、なんと最大60人まで受入れ可能となったのです。

「優良企業」は本当に「優良」なのか

 国会審議では、「期間を3年から5年に延ばすのは優良企業だけだから何ら問題ない」と政府は答弁してきました。そのためには、「優良企業」の認定基準を厳しくしなければなりませんが、適切とはいえません。

 「優良企業」の判定は、項目別の点数制となっており、6割以上の点数をとれば「優良」と判定されます。例えば、「技能実習生の待遇」の項目は、実習生の最も低い賃金が地域最低賃金よりも15%上回っていることや、各段階ごとの昇給率が5%以上であるだけで最高点(10点)が与えられます。
 現在、実習生がもっとも多い愛知県を例にとると、地域最賃は845円なので972円で5点、888円ならば3点の加点がつきます。その他の待遇面で、残業時間の規制や宿舎などの生活環境についてはまったく触れられていないことも問題です。

 半面、「技能等の習得等に係る実績」の項目では、「基礎級程度の技能検定等の学科試験および実技試験の合格率」が95%以上ならば20点、80%から95%以上で10点の加点がつきますが、そもそも現在の基礎級程度の合格率は99%を超えているなかで、判断基準としての意味をなしていません。こうしたポイントでは、「優良」の基準にはなりません。

 そのほかにも相談体制が整っていると15点、過去3年以内における失踪者がゼロだと5点(ゼロであたりまえなのに)など、「こんなことより実習生の待遇の方が大事でしょ」と思うことがたくさんあります。

「技能実習機構」の職員は全国でたった330人

 成立した「技能実習生保護法」で、保護に値するのは技能実習機構の創設です。17年3月1日に開設しましたが、この機構は本当に機能するでしょうか。
 まず心配なのは組織人員の少なさです。本部に80人、全国13か所におかれる地方事務所・支所は合計250人、これで本当に大幅に拡大する実習生を保護することができるでしょうか。

 監理団体(全国で約1,900団体)には1年に1回、実習企業(同3万5千社)には3年に1回実施検査に入ることになっていますが、これだけの体制でその通りに実行できるとは思えません。国会審議でも「3年に1回では少なすぎる」と指摘されていましたが、それすら無理な人員です。機構が真に保護機構になるためには、職員の増員が不可欠です。

2015年度の実習生の死亡者は30人も

 「LUM」でもたびたびお知らせしてきましたが、実習生が多数死亡しています。2015年度は30名でした。ここ数年高止まりしています。有効な対策が立てられないままに実習生数の増加につれて死亡者も増えてきました。今後のことがとても心配です。過労死をなくすための方策を真剣に考えなくてはなりません。

技能実習制度への「介護」職種の追加は無謀

 介護職種の追加は、「初めての対人サービス」であり、「介護」という命に直結する分野であるという点で、これまでの職種の追加とは質的に異なるものです。
 最も大きいのはやはり日本語の問題です。「入国時はN4程度、1年後にはN3程度の日本語能力を介護固有の要件として課す」とされていますが、この程度のレベルで他の介護職員や利用者の方々とコミュニケーションがとれるものなのか、はなはだ疑問です。

 その上、地方にはその土地々の方言があり、実習生は苦労するでしょうが、方言で会話することにより、お年寄りの気持ちが安らぐこともあります。

 来日にあたって日本語要件がついたのも初めてであり、実習生希望者はこれまでよりいっそう母国での日本語学習に力を入れなければなりません。それによって必要になる研修費用などは、これまでより多額になると考えられ、より多くの借金をかかえて日本に来ることが心配されます。

実習生も利用者もストレスが溜まる職場へ

 さらに、雇用先を変えられない状況の中で、がまんを強いられることになります。介護職場は、日本人にとってもストレスの多い職場です。言葉の通じない実習生が入ることによって、さらにストレスがたまるかもしれません。実習生、利用者どちらにとってもいい結果にならないことになるのは目に見えています。

 介護労働者が足りないことは、介護労働者の労働条件をよくすることでしか解決できません。日本政府の場当たり的な対応が何をもたらすか、恐ろしくさえなります。
 私たちは、専門用語を含む日本語能力が必要不可欠な職場に、実習生を入れるべきではないと強く主張します。消防士さんの話(別記)を聞いて、あらためてその思いを強くします。
 参議院の付帯決議で「3年を目途に見直しを行う」ことが決められていますが、何かあってからでは遅いのです。すぐにも対象職種から外すべきです。

夜間の救急出動に日本語が不十分な介護実習生は心配 ~ 関東地方のある消防隊員の話

 お年寄りが心肺停止になるなど昼夜を問わず、老人福祉施設からの依頼で出動することは多いです。日中は介護職員がたくさんいるので入居者がどのような状態なのかをきちんと説明できる人がいますが、夜間は2~3人しかいない施設もあり、1人の施設もあります。

 救急隊は介護職員から説明を受けながら応急処置を行い、携帯電話で病院と連絡をとりながら搬送していきますが、夜間だときちんと説明できない介護者もいます。今後日本語が不十分な実習生が夜勤に入り、きちんと説明できなかったために手遅れになったりしたらと思うと、本当に心配です。

労働相談

ケース1 超長時間労働で賃金8万円だったPさん(ネパール人)
 当初本訴も考えていたのですが、会社の業績が思わしくないとの情報が入り、Pさんとも相談の上早期解決を図るために労働審判を申立て解決しました。解決金を一度に払うことはできないとの会社の状態もあり分割払いになりましたが、毎月きちんと入っています。
 Pさんは「組合のおかげで生活が安定しました。とても感謝しています」と喜んでくれ、今年のお花見にはネパールから日本に来たばかりの奥さんともども参加してくれました。

ケース2 800万円の請求をされたRさん(バングラデシュ人)
 飲食店に働いていた時「お客さんに上乗せ請求をして差額分を着服した。払わなければ裁判に訴える」と800万円もの損害賠償を請求されたRさん、結局現在までのところ訴えられてはいません。組合の「名誉棄損だと考えている。裁判に訴えればこちらも対抗手段を取る」との回答が効いたのか、それとも証拠がないので裁判は無理と思ったのか、たぶん両方でしょうが、脅していくらか払わせれば儲けものと考えていたのでしょう。
 悪質なやり方です。Rさんと組合の毅然とした対応で未然に防げました。

ケース3 取引先からリベートを取ったとされたHさん(中国人)
 会社での立場を利用して取引先からリベートを取ったとして、3400万円の損害賠償を請求され、懲戒解雇されたHさん。その後会社はHさん所有の自宅マンションを仮差押えてきました。Hさんと組合は弁護士に依頼し、仮差押え解除をもとめる異議申立を行い裁判が続いていましたが、最近「仮差押えを解く。解雇は撤回する。会社は解決金を支払う」ことを内容とする和解が成立、解決しました。この間のHさんと奥さんの心労は大変なもので、一時はうつ状態になりましたが、日本に暮らすHさんのお兄さん夫妻 が毎回審理日に同行し、ふたりを支えました。
 結果はHさんの完全勝利といえるもので、和解成立時に奥さんの顔がパッと明るくなったことが忘れられません。よかったです。

Pocket