「育成就労制度」関連法案への声明

 首都圏移住労働者ユニオン(LUM)は24年3月15日、「育成就労制度」関連法案の国会提出にあたって、以下の声明を発表しました。


「育成就労制度」関連法案の国会提出にあたって(声明)

2024年3月15日
首都圏移住労働者ユニオン(LUM)
執 行 委 員 長  松 澤 秀 延

1、岸田内閣は3月15日、国際社会からも「現代の奴隷制度」などと批判されてきた技能実習制度について、昨年11月に取りまとめられた有識者会議の最終報告を受けて、新たな制度を創設するための関連法案を閣議決定し、ただちに国会に提出した。
 政府は、今通常国会会期末までに関連法を成立させ、3年後の新制度の運用開始をめざしている。

2、法案は、現行の技能実習制度を廃止したうえで、「人材確保と人材育成」を目的とした「育成就労制度」を新設することなどを柱としている。
 育成就労制度は、技能実習制度での3年の転籍制限を、職種によって1年ないし2年に緩和することや、また、問題となっていた悪質ブローカーを排除するための規制の強化などを内容としている。
 しかし育成就労制度は、人手不足が深刻化するなかで人材の育成よりも人材確保に主眼が置かれ、そのために外国人労働者の生活と権利の保障という面では、きわめて不十分なものである。

3、有識者会議の最終報告でも「様々な人権侵害を発生させ、深刻化させる背景・原因となっている」と指摘された転籍制限は、有識者会議では1年間への短縮が議論されてきたにもかかわらず、都市部への外国人労働者の流入を懸念する自民党の主張に迎合し、法案では制限期間が最長で2年にまで引き延ばされた。
 このままでは、転籍の自由もなく失踪せざるを得ない実態や、パスポート取り上げなどの人権侵害を放置することにもなりかねない。転籍制限の原則撤廃、少なくとも労働基準法を考慮しつつ1年を超える転籍の制限は設けるべきではない。

4、その他にも育成就労制度は、家族の帯同を認めないことなど技能実習制度と目立った差異は見られず、廃止とは名ばかりで名称だけを付け替えたものにすぎない。そればかりか、税金や社会保険料の未納に対する永住権の取り消しが唐突に盛り込まれるなど、外国人労働者の権利を後退させる法案は、容認できるものではない。
 国連の自由権規約委員会は、技能実習制度にかかわって「強制労働の被害の適切な認定と加害側の処罰」を勧告している。日本政府に求められるのは、小手先の見直しではなく、外国人労働者の生活と権利を守るための抜本的な制度改善である。
 首都圏移住労働者ユニオンは、すべての外国人労働者の権利擁護のために、引き続き全力をあげてたたかい抜く決意である。(以上)