LUM No.96 (25.7.1)

外国人排外主義を許すな!

「外国人は優遇」 は本当か?
SNSをファクトチェック

 7月20日投開票の参議院議員選挙を前に、外国人排除・規制を公約に掲げる政党が現れ、そのことが選挙の争点にもなりつつあります。こうした動きに合わせてSNS上では、「外国人が過度に優遇されている」などと指摘する投稿も目立っています。

 また、東京都議会議員選挙を直前に控えた6月20日と21日に、NHKとJX通信社がインターネットで実施した世論調査では、「日本社会では外国人が必要以上に優遇されていると思いますか」との質問に、「強くそう思う」か「どちらかといえばそう思う」と答えた人は64.0%に上りました(下図、東京都民10代から90代までの約4600人が回答)。

世論調査

 本当に外国人は「必要以上に」優遇されているのでしょうか。
 SNS上で拡散されている記事にかかわって、ふりまかれている情報が正しいのか、新聞・テレビの報道各社が検証(ファクトチェック)しています。各社の記事も参考にしながら、いくつかの事例を見てみたいと思います。

ファクトチェック(その1)

「中国人留学生に1000万円」
→日本人学生も対象の文科省の支援制度

 博士課程後期の学生を対象にして、文部科学省の「次世代研究者挑戦的研究プログラム(略称:SPRING)」があります。生活費や研究費などを年間最大290万円支援する制度で、最大3年間支給されていることをとらえて、SNSでは、さも中国人だけが優遇されているような投稿が拡散しています。

 本当にそうなのでしょうか。SPRINGは留学生だけでなく、日本人学生も対象です。2024年度の実績では、対象となった10,564人のうちおよそ6割の6,439人が日本の学生、4,125人が留学生、そのうち3,151人が中国人でした。SPRINGの選考基準にもとづいて、日本人も外国人留学生も分け隔てなく選ばれることからも、中国人だけが優遇されているという主張はあたりません。

 問題はそれだけにとどまりません。4割が外国人留学生であることを問題視した自民党議員が国会質問でとりあげ、文部科学省も生活費の部分については、日本の学生のみとする制度改悪を決定しました。

 これに対して、留学生や支援する日本人学生らが制度変更に反対する署名に取り組み、文科省前の抗議行動では約2万人分の署名を提出しました。SNSのねじ曲げられた情報、自民党議員の国会質問、それに迎合する文部科学省。留学生支援の縮小には断固反対します。

ファクトチェック(その2)

「外国人留学生に月15万円も支給」
→国の支援制度への不当な攻撃

 日本政府による「国費外国人留学生制度」のもとで、海外からの留学生には旅費の支給や学費の免除のほか、研究課程に応じて月額145,000円から117,000円(地域加算あり)の奨学金が支給されます。

 国費留学制度は、海外から優秀な留学生を受け入れることで、国際交流や友好親善の促進、各国での人材育成、日本の大学の国際化や教育研究力の向上、日本と世界の発展に寄与することなどを目的としています。

 支援を受けられるのは、各国の日本大使館で行われる試験に合格したり、それぞれの大学で優秀な成績を取っていたりする人に限られています。日本にいる336,708人(2024年度)の留学生のうち、大半が私費で来ている留学生で、国費留学生は9,304人と留学生全体の2.8%です。

 国費留学制度に関わる予算は、2025年度で177億円です他方、日本の学生に対しては授業料等減免と給付型奨学金をセットにした「高等教育の修学支援新制度」があり、返済不要で年間最大160万円の支援が受けられます。文科省の資料によれば、2025年度の予算は授業料等減免で4,578億円、給付型奨学金で1,954億円、地方分を合わせた総額は7,025億円、約84万人が対象となると文科省は想定しています。

 単純に両者の予算規模を比較しただけでも、留学生がとりたてて優遇されているわけではないことは一目瞭然です。

 こうした実態を確かめることなく、「日本人は奨学金で借金しているのにおかしい」などとSNSに投稿し、1千万回以上閲覧されているものもあります。なかには意図的に排外主義をあおるような投稿もあり、SNS情報を鵜呑みにするのは危険です。

ファクトチェック(その3)

「外国人の国保未納は年間4000億円」
→実際の未納額は日本人も含めて1457億円

 国民健康保険には、3か月を超えて在留する外国人も加入する義務があります。主に留学生や自営業者などが対象で、支払う額は収入に応じて決まり、収入がない場合でも支払い義務が発生することから、SNSでは「外国人による国民健康保険の未納が年間で4000億円」などとする投稿が拡散しました。本当でしょうか?

 厚生労働省の資料を見ると、2022年度の日本人も含めた国民健康保険全体の未納額は、年間1457億円(収納率94.14%)となっています。外国人の未納額が年間4000億円というのは真っ赤なウソで、外国人排除を意図して流したフェイクと見られます。

 こんな子どもだましのようなウソに踊らされて、X(旧ツイッター)では150万回以上見られているものもあったとNHKが伝えています。SNS情報はすぐに信じない、本当だろうかと疑ってみる、情報の出所を自分で確かめ、デマ情報をむやみに拡散させない。そうしたルールをあらためて確認することが大切です。

ファクトチェック(その4)

「生活保護の3分の1は外国人」
→外国籍の受給世帯はわずか3%たらず

 永住資格を持っている人でも、生活保護を受けるのはとても難しく、実際に外国人のサポートをした人なら、だれでもすぐに「これはデタラメ」とわかる話です。

 厚生労働省の「被保護者調査」によると、2025年4月に生活保護を受給した世帯は全国で164万3千世帯で、そのうち世帯主が外国人は4万7千世帯となっています。全体に占める割合はわずか2.8%にすぎません(別図、「東京新聞」記事から転載)。

 生活保護が利用できる外国人は、永住者や定住者など国内での活動制限がない在留資格を持つ人に限られます。こうした資格を持つのは、162万70人(2024年末時点)で在留外国人全体の4割程度であり、それ以外の外国人が困窮しても、利用対象にはならないのが実情です。また、不支給だった場合に日本人には認められている不服審査請求が、外国人には認められていません。

 こうしたデマ情報を検証した東京新聞は、「悪質なデマに惑わされないよう、 注意が必要」と警鐘を鳴らしています。生活保護は「最後のセーフティネット」と言われます。あからさまなデマが許されないのは当然として、日本で安心して働きつづけられるように、在留資格で区別することなく、生活困窮者にはすべて生活保護が受けられる制度が求められます。


追い出しありきの「不法滞在者ゼロプラン」

 出入国在留管理庁(入管庁)は、「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(以下、ゼロプラン)を発表しました。「ゼロプラン」は、「入国管理」「在留管理・難民審査」「出国・送還」の3段階で、在留外国人の管理・監視を強化するとしています。

 また、6月6日の「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」が、社会保険料や医療費未納に対して在留期間の更新を認めないとした「総合的対応策」を決め、その翌週に閣議決定した「骨太の方針2025」には、「不法就労対策及び被仮放免者の動静監視の強化、不法滞在者ゼロを理念に摘発・送還」との文言が盛り込まれました。

 日本国内での人手不足から、外国人労働者の受入れを積極的に推進する一方で、政府は外国人排除の姿勢を急速に強めています。

■護送官付き国費送還を3年で2倍に

 5月23日に発表された「ゼロプラン」は、2030年までに難民認定申請の処理期間を現在の平均22か月から6か月まで短縮、「送還忌避者」数の半減、護送官付き国費送還を3年後に倍増させるといった数値目標を示しています(別図)。護送官付き国費送還の倍増

 その他、デジタル技術による不法滞在者の把握、被仮放免者の不法就労防止などをあげていおり、これらの施策は、「安心して暮らせる共生社会」を掲げる一方で、来日した難民などには極めて厳しい内容です。

 難民認定の処理期間の短縮により、時間をかけて当事者の事情を聞くことなく、型どおりの書類審査だけで強制送還されてしまう場合が予想されます。紛争地などから逃げてきた難民は、戻りたくとも戻れない複雑な事情をかかえており、有無を言わせず追い返す行為は命にかかわる重大問題です。

 護送官付き国費送還の倍増も、看過できない問題を含んでいます。少なくない外国人が「不法滞在」のレッテルを貼られながらも、日本に住みつづけたい、働きたいと願いながら家族らと毎日を送っています。そうした人々の生活を足元から踏みにじり、本国に「護送」してまで追い返すのは、人道上も決して許されません。

 これを先取りするような出来事がすでに起きています。10年以上前に日本人女性と結婚しながらも在留資格が認められず、「仮放免」扱いにされてきたネパール男性に対して、東京入管は突然、7月末までに強制送還すると通告してきました。入管は男性にパニック障害があることを認知しており、一方的に「不法」と決めつけて何が何でも排除する非道な「ゼロプラン」の本質を端的に表しています。

■国民支持ねらって「違法」外国人を描き出す

 自民党は参議院選挙も念頭に、提言「違法外国人ゼロを目指して」を発表しました。「ルールを守らない外国人には厳格に対応」として、不法就労・偽装滞在の防止、交通ルール法令遵守の徹底、外国人の税・社会保険料の未納防止などを提言しています。

 これを具体化したのが、関係閣僚会議での「総合的対応策」であり、施策を着実に実行に移す「司令塔」として、内閣官房に事務局まで設置する力の入れようです。石破首相は「ルールを守らない方々には厳格に対応する」(6日の関係閣僚会議)とのべ、鈴木法務大臣も「ゼロプラン」発表にあたって、「国民の間で不安が高まり、対応が強く求められている」と強調、自民党の提言でも同様のことがのべられています。

犯罪件数 果たしてそれほどまでに「ルールを守らない」外国人が増えているのでしょうか。
 法務省の「犯罪白書」では、来日外国人による刑法犯検挙件数は、05年をピークに減り続け、ただちに問題視すべき状況ではありません。また、「不法滞在者」数は、在留外国人総数のわずか2%に過ぎず、先進諸国と比較しても極めて低い水準です。
 さらに、外国人の社会保険料や医療費の未納がどれほどあるのかも、政府は具体的なデータを示さず、こうしたことから、「ゼロプラン」は「漠然とした印象論前提」(「朝日」5/23)とする報道も見られます。

 外国人による交通違反事故が連続し、一部メディアが海外からの観光客による迷惑行為を誇張して伝えるなか、仮に漠然とした外国人への不安感や嫌悪感を利用し、それに毅然とした姿勢を見せることで石破内閣や自民党への支持を得ようとしているならば、筋違いもはなはだしいと言えます。

■真の「共生」にむけた幅広い議論を

 18年から設置された「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」は、「外国人との共生社会の実現に向けた環境整備について(中略)政府一体となって総合的な検討」をはかるとし、政府が受け入れをすすめる外国人労働者の生活と権利の擁護が議論の重点でした。

 それから7年、お互いに助け合う「共生」の観点が薄められ、排外主義が前面に出つつある点は注視すべきです。それはまた、各地で顕在化する在留外国人への「ヘイトスピーチ」やSNS上での誹謗中傷とも無関係ではありません。
 今後とも外国人労働者が増えていくなかで、外国人と共存できる日本をどうやってつくりあげていくのか、冷静で真摯な議論が求められます。


本多書記長の労働相談日記

(その1)ベトナム人男性(IT技術者)

転籍の辞令を一方的に送りつける

 Tさんは、2015年に留学生として来日、1年間日本語学校に通った後、IT関係の会社に就職し、開発関係の仕事をしてきました。現在の会社に入ったのは2022年9月1日で、2年9か月正社員として働いてきました。

 ところが今年5月29日、突然社長(日本人)からメールが来て「契約社員への変更、もしくはM社(所在地はベトナム)への転籍のどちらかを選ぶように」と一方的に通告されました。契約社員変更後の勤務条件は、「週2回勤務、時給1800円」でとても生活できる賃金ではありません。また転籍先とされたM社はベトナムにある全くの別会社で、勤務条件は「見直しが発生する」と書いてあるだけでした。

 メールでは6月6日までの返事を求めており、Tさんは「全く納得できません」と返信したところ、同日社長より「納得できるできないは聞いていません」「本人で選択できるようにしていることも、私としては譲歩なのですが、それすらも受け入れられないということは、あとは会社として判断します」とのメールがきて、「7月1日からM社への転籍を命ずる」とする辞令が6月6日付で一方的に送られてきました。

 Tさんと社長は6月19日に話し合うことになっていましたが、Tさんはその前日の18日にLUMに相談に来ました。LUMはその日のうちに「Tさんへの転籍命令は不当である。よって、Tさんの転籍を取り消すこと、契約社員への変更を取り消すこと、これまで通りの労働条件で雇用を続けること」とする要求書を速達で送付しました。

 仕事上でつながりのある会社とはいえ、別会社への転籍を一方的に命じてくるとは信じがたいことです。これでは解雇にほかなりません。会社との本格的な団交はこれからです。

(その2)香港出身女性(業務委託)

委託契約を結んだのに仕事はゼロ

 Kさんは、2024年4月1日に、ある会社と業務委託契約を結び、技術・人文知識・国際業務の在留資格を付与されました。業務委託契約で在留資格が付与されるためには、安定的、継続的に業務が委託されることが必要であり、この会社はこの安定性、継続性が担保されているとして、在留資格が付与されたと考えられます。

 しかし、この会社は業務委託契約締結後、「仕事があれば頼むので、自宅待機していてください」というばかりで一度として業務委託をしませんでした。この不誠実な対応によって、Kさんは生活苦に陥りました。Kさんは母国(香港)の親に頼んで生活費を送ってもらい、業務が委託されるのを待っていましたが、まったく委託されない状態が続きました。他の委託先や就労先も探しましたが見つからず、更新時期が来てしまいました。切羽詰まったKさんは、特定活動に変更して就職活動をしたいと考え、入管に特定活動付与申請をしました。

 結果はまだ出ていませんが、このような状態に陥ってしまった最大の原因は、会社が入管への申請書を守らず、業務委託を一度もしなかったことにあります。Kさんは組合員ではないのですが、このような会社の対応は不誠実であると判断し、入管に特定活動へのビザ変更をお願いする上申書を提出しました。変更できればいいのですが。


強制収容は「国際人権法違反」と東京地裁が断罪

 東京地裁は、6月17日、原告2人(イラン人Sさん、クルド人Dさん)がうつ病と診断されたのに収容したのは、国際人権法である「自由権規約」などに違反するとして、国に対し2人にそれぞれ60万円を支払うよう命じました。

 2人は難民申請を認められず、10年以上にわたって、収容と仮放免を繰り返してきました。うつ病を発症し、医師が収容を避けるべきだと診断した後も収容したことは、「収容の必要性が原告の心身に与える不利益を上回るとは言えない」と指摘、恣意的収容を禁じる自由権規約などに違反すると判断しました。

 しかし、裁判所などによる審査がないまま、強制的に収容する日本の入管制度全体が、国際法に違反しているといる主張は、認められませんでした。Sさんは「3年以上も収容した日本のやり方が間違っているとの主張が認められなかったのは残念」と記者会見で語りました。


「パレスチナ支援ストラップ」をつけて議員会館へ

 全日本年金者組合東京都本部のTさん、国会議員会館に入る際の荷物チェックで、バックに付けていたLUM作成の「パレスチナ支援ストラップ」を、「政治活動だから外してください」と言われました。すぐさま、「なんで外さなければいけないの! 絶対に外しませんよ!」とTさんは猛反発。警備員は他の警備員を呼んでTさんを取り囲みました。

 これにひるむことなくTさんが、「平和な世界になってもらいたいという気持ちを表しているだけでしょ。どこが政治活動なのか説明してください」と毅然として主張。3人の男性警備員は誰一人答えることができず、最後には「じゃあ、いいです」。
 Tさんはストラップを付けて、堂々と議員会館の中に入りました。

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