LUM No.93 (24.10.1)

パレスチナ支援ストラップの注文が次々と
「宣伝活動に活用した」との報告も

 パレスチナ支援のストラップは、9月初めに『しんぶん赤旗』で紹介されたこともあり、全国の団体・個人から続々と注文が届いています。東京都内で子ども食堂を運営している女性からは、「ガザでの死者が増えているなか、『何かできること』と思っていました」と、さっそく100枚の注文が入りました。子ども食堂に来た人たちに配るとのこと。
 ストラップをカバンやスマホに付けて、戦争反対の声を大きくひろげていきましょう。

■拡大コピーしてプラカードを作成(神奈川県Uさん)

ストラップを拡大して作ったプラカード いい活動だと思ったので、自分で両方の面を一枚にまとめ、A3判に拡大して厚紙に貼り、ラミネートしてクビにかけられるようにひもをつけました。
 早朝駅前宣伝の時に使用したところ、見ていた中年の男性から「カンパはやってないの」と聞かれたので、「いただければちゃんとパレスチナ支援団体に渡します」と答えると、1,000円カンパしてくれました。

 ストラップを活用して、こんな運動が出来るなんて、思いがけなかったことで、幹事一同、驚きとうれしさでいっぱいになりました。ストラップよりさらに多くの人達の目に触れたわけですね。とても励まされました。ありがとうございました。(LUM一同)


(投稿)公園で野宿を強いられる親子

海野博(LUM幹事)

 9月上旬の夜、私の携帯電話に「難民事業本部(以下RHQ)の建物の前の公園に母親と、中学生くらいの3人の子どもが、荷物を持って寝ているところを見たところです。RHQも彼らを助けるという考えはありません。」と、昨年よりLUMが支援してきたコンゴ難民からメッセージが入った。

 すぐに現地に向かえるスタッフがいなかったので、RHQに電話して「このままだと、野宿を強いられるので、ネットカフェなどの緊急的に宿泊できるところを手配してもらえませんか?」と依頼した。いま、その家族と話をしたところだと言うRHQの職員は、「10月1日にもう一度、RHQに来るように伝えた」との返答が返ってきた。

 野宿するしかない家族を、20日以上も放置すると言う。「何とかなりませんか」と頼み込んでも、「すでに伝えたとおりだ、これ以上話すことはできない」と担当者からは冷たい答えしか返ってこなかった。

 私は、障害者福祉の支援員として28年障害者福祉かかわってきたが、日本国籍のある人にこのような対応をしたら、明らかに人権侵害であり、支援員としては許されないだろう。

 難民認定を受ける前の外国人だから、このようなことが許されるのか。日本国憲法がさだめる基本的人権は、日本国籍のない者にはないというのか。行政責任は及ばないのか。そんなのおかしい。基本的人権は、国籍には関係なくすべての人が、生まれながらにして持っている権利だ。

 外務省が設置したRHQは、難民申請者たちにとって最後の砦であり、本来セーフティネットになるはずの建物の前で野宿をするとは、いったいどうなっているのか?

 この状況をもっとリアルに社会に訴え、私たちの税金をこのような人たちにも使うべきだと感じた。「難民ならば野宿はやむを得ない」という、こんな日本じゃダメなんだ。


子どもには在留特別許可、親は国へ帰れ
国際条約に違反する措置は認められない

 出入国在留管理庁は9月27日、在留資格がなく強制送還の対象となり得る18歳未満の外国籍の子ども212人とその家族183人に「在留特別許可」を付与したと発表しました。

 しかし今回の措置は、日本で生まれた子が対象で、日本で一定期間生活をしていても、海外で生まれたり、学校をすでに卒業したりしている子どもは含まれていません。親が偽造パスポートで入国したなど、子どもに関係のない理由で在留特別許可が付与されないケースもたくさんあります。

 また、子どもには許可を出し、両親とも又は父親に在留許可が降りないケースが3割もあります。日本政府のやっていることは、人権感覚のみならす人の情もありません。自分がその状態に置かれたらどう思うかという想像力もありません。怒りを通り越してなさけなくなります。

 日本も批准している国連「子どもの権利条約」第7条は、「(子どもは)父母によって養育される権利を有する」としています。親と子どもを引き離すことは、条約違反にほかなりません。

 入管庁は、家族を含めた在留特別許可付与は今回限りだとしつつ、今後も個別事情次第で例外的に認める可能性があるとしています。私たちの今後の運動で全員に「日本にいる権利」を勝ち取っていきましょう。


本多書記長の労働相談日記

(その1)香港生まれ中国人女性

伝統工芸の修業中は労働者ではない?

 香港生まれの中国人女性Mさん(23)は、「留学」の在留資格で来日しました。専門学校で学び、卒業後の就職活動の中で、都内某区が募集していた伝統工芸技術育成事業に応募し、職人見習いとして採用されました。育成事業制度では、区から月10万円の研修手当と月3万円の家賃補助が支給されます。

 採用決定後、雇い主が入国管理庁に申請し、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格を得ました。申請書の「給与・報酬」欄に、「月15万円」と書かれていたので、Mさんは15万円に加えて、区から支給される研修手当10万円を合わせた25万円が、賃金として支払われると思っていました。

 入国管理庁もMさんと同様に考えて、在留資格を認めたものと思われます。月15万円では、「技人国」資格の賃金としては低すぎるからです。実際に、雇い主が入管に提出した「雇用理由書」には、「区から10万円の補助金(研修手当)が最長6年受け取れる」と書かれていました。

 しかし、4月の給料日に支払われたのは、区から支給される13万円(研修手当と家賃補助の合計)だけで、疑問に思ったMさんは雇い主である師匠に尋ねると、「腕が上がって、Mさんの作る商品で儲けが見込めるようになれば、出来高で支払ってもよい」などと言うだけでした。

 わずか13万円では生活は苦しかったものの、日本の伝統工芸の技術を身につけたい一心で、日本に来るまでに貯めた貯金を取り崩し、出費を切り詰めながらMさんは修業に励んできました。師匠には生活の苦しさを訴えましたが、師匠の気分を害しては修業に差しつかえるのではと気を回して、はっきりとは言えなかったとMさんは打ち明けます。

 貯金が底をつきかけたころ、生活費を補うために通訳のアルバイトをしたいと、Mさんは師匠に申し出ました。ところが、師匠から「そんないい加減なことでは困る」と強く叱責され、どうしたらいいかと相談に訪れました。

 話を聞いてLUMは、雇用主としてのMさんの師匠と団体交渉を行いました。しかし、師匠は「修業なので労働者ではない」などと主張し、正当な賃金の支払いを求める組合の要求をはねつけました。

 雇用実態からしても、Mさんが労働者であることは明らかです。労働基準法第69条でも、「使用者は、徒弟、見習い、養成工その他の名称の如何を問わず、技能の習得を目的とする者であることを理由として労働者を酷使してはならない」と定めています。

 交渉でそのことを示すと、「ならばこの修業はなかったことにする。明日から来なくていい」などと、師匠は開き直りました。やむなく交渉は打ち切り、Mさんに結果を伝えると彼女も納得し、伝統工芸の修業はあきらめて別の仕事を探すことを決断しました。

 一方で、いままでMさんが働いて得た賃金は、前記した労働基準法に照らし合わせても不十分なものです。したがって、労働時間を精査しつつ不払いと認められる賃金の支払いを、労働基準監督署に申告することにしています。

 これはMさんだけの問題ではありません。今回はMさんが組合に相談に来たから可視化したのであり、「修業」の名のもとにMさんと同じ状態に置かれている人や、過去に同じ経験をした人たちがいるものと思われます。

 生活を保障もなく、後継者不足の職人を育てることは困難です。前近代的な徒弟制度もあって、せっかく日本の伝統工芸に興味を持ち、挑戦してみようとしたMさんの望みは断たれましたが、伝統工芸の後継者を育てていくには、行政をふくめたきちんとした財政的な支援は不可欠です。そのことをはっきり示した貴重なケースでした。

(その2)ミャンマー人男性

心当たりのない理由で退職を強要

 ミャンマー人男性Uさんは、埼玉県の飲食店でまじめに働いてきました。ところがちょっとした行き違いから、店長に「もう辞めてください、アウト」などと乱暴に言われ、退職届にサインをさせられました。退職理由も書いてありましたが、日本語で書いてあったので何が書かれているかわかりませんでした。

 コピーをもらって自宅に帰り、アパートの大家さんに見せたところ「同僚にセクハラをしたため」と書いてあることがわかりびっくり。Uさんがもうここでは働きたくないと言うので、組合はそれを送り返させ「退職勧奨を受けたため」と日本語とミャンマー語で書いた退職届を会社に送りました。現在、この退職届にもとづく退職証明書の発行を求めて会社側と折衝中です。

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