首都圏移住労働者ユニオン(LUM)は24年6月14日、「育成就労制度」関連法の成立にあたって、以下の声明を発表しました。
「育成就労制度」関連法の成立にあたって(声明)
2024年6月14日
首都圏移住労働者ユニオン(LUM)
執 行 委 員 長 松 澤 秀 延
1、第213回通常国会で審議されていた「育成就労制度」創設にかかわる関連法案は本日、参議院本会議で採決され、自民党・公明党・日本維新の会・国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。
外国人労働者の生活と権利に直接かかわる重要法案であったにもかかわらず、国会が自民党の「裏金」問題で揺れるなか、改正法の成立が強行された。
2、法案は、技能実習制度の「廃止」を柱にして、転籍制限の緩和、送り出し機関の取り締まりの強化、支払手数料の抑制をはかることなどを内容としていた。
転籍制限は最短で1年に短縮されたものの、修得技能や日本語能力など高い要件が課され、相当な困難が予想される。また、来日前の重い負担の解消や悪質ブローカー根絶のうえで、改正法がどこまで実効力があるのか、法案審議を通しても疑問が残った。
このように「育成就労制度」は、国際社会からも「現代の奴隷制度」と批判される技能実習制度を基本的に温存するもので、さまざまな人権侵害の解消にはつながらない。
3、永住許可の取り消し要件として、税金や社会保険料の滞納などが付加される。長年にわたって、日本で暮らしてきた外国人の生活基盤を脅かすものであり、当事者はもとより、日弁連や移住連などの諸団体から厳しい批判の声が集中した。
委員会審議においても論戦の焦点となったが、永住者の生活状況などに十分配慮するよう附則に盛り込む修正が施されただけで、原案通りに成立した。
当事者参加による十分な議論がなかった経過は重大であり、審議のやり直しを求める。
4、「国際協力の推進」を掲げて発足した技能実習制度は、対象職種を次々と拡大させ、外国人労働者を使い勝手のいい労働力として利用する制度へと変質してきた。今回の法改定では、「国際協力」の文言さえ条文から消えてしまった。
「人材確保」を主たる目的に外国人を受け入れるならば、労働者としての生活と権利を守る制度の拡充が不可欠となっている。そうした議論が不十分なまま、制度改定が強行されたことは認められない。法律の附則では、施行後3年を目途に運用状況を検証し、必要な措置を講ずるとしており、今後、「育成就労制度」へ厳しい監視の目を向けていく必要がある。
首都圏移住労働者ユニオンは、外国人労働者との共生社会の実現にむけて、引き続き全力をあげる決意である。(以上)