LUM No.72 (18.1.15)

2018年 平和と人権が守られる年に!

政府の外国人政策がますます支離滅裂・非人間的になってきた

介護実習生は勤務6か月から夜勤にー>さまざまな問題が起こる恐れ大
介護実習生の受け入れを5年に延長ー>に資格を取らせて働かすねらい
特区で外国人農業労働者を受け入れー>劣悪な労働を強いられる恐れ大
日系人四世に「特定活動」の在留資格ー>日系二世・三世との一貫性なし


たった半年で日本語が格段に上達するはずがない!
~ 「介護実習生を6か月後から夜勤に入れる」厚労省が決定 ~

 介護実習生を夜勤に入れるのか否か、国会審議で何回質問されても「今後検討する」の一点張りで明言を避けてきた厚生労働省が、「勤務開始後6か月を経過すれば人員基準にカウントでき、複数体制なら夜勤も可能」とのガイドラインを公表しました。

 あってはならないことですが、LUM70号に掲載した消防隊員の方々の心配が的中する恐れが多分にあります。これは実習生だけの問題ではありません。夜勤はベテランの介護士さんにとっても精神的に苦痛を強いられるものなのです。そこに日本語が不十分な技能実習生が入り(入らされ)、実習生を指導しながら夜勤をこなさなくてはならなくなったら苦痛は増大するばかりです。

 日本語は外国人にとっては難しい言語です。たった6ヵ月でそれも仕事をしながらの急激な上達は無理な話です。
 この決定は人間の命、そして労働者の働き方をまったく考えていないもので、許しがたいものです。一日も早く変えさせなければなりません。そのために何をするか、いま考えています。

資格を取らせて日本で働けるようにすることがねらい
~ 「介護実習生の受入れ期間を5年に延長」政府が閣議決定 ~

 政府は、介護現場で新たに受け入れる外国人の技能実習生が介護福祉士の国家試験に合格した場合、日本で働き続けられるように在留資格の制度を見直す方針を決め、昨年12月8日に閣議決定した「人づくり革命」に盛り込みました。
 具体的には、入管難民法の法務省令を改正し、最長5年の実習期間終了後、いったん帰国して介護の在留資格で再入国した後、無期限で働き続けられるようにします。

 介護福祉士国家試験は年1回(1月下旬に筆記試験、3月上旬に実技試験)しかなく、受験資格を得るためには3年の実務経験が必要です。ですから受入れ期間がこれまでどおり最長3年だったなら、介護職種を対象職種に追加しても資格を取らせてずっと日本で働かせることはできませんでした。今回最長5年になったからできることです。どう考えてもこれもねらいの1つだったと思わざるを得ません。

 「深刻な人手不足が続く介護分野での人材確保策の一環だが、技能実習制度は本来、外国人が母国に帰って技能を移転することが目的。なし崩し的な外国人が受け入れには批判も出そうだ(共同)」とマスコミ報道されていますが、批判が出るどころではありません。明らかに技能実習制度の逸脱であり、整合性が取れません。建前が完全に崩れています。実態だけでなく、建前まで崩れてしまった技能実習制度は直ちに廃止されるべきです。


派遣会社が雇用して外国人労働者を農家に派遣
~ 外国人農業労働者の受け入れは問題点大 ~

 政府は昨年12月15日、国家戦略特区での農業労働者受け入れにかかわる指針(別記)を決めました。これは大きな問題を含んでいます。これまでの受け入れは、ひどい実態があったとはいえ実習生にしてもまた同じ特区での受け入れの家事支援にしても、少なくとも直雇用でした。しかし、農業労働者を受け入れるのは派遣会社なのです。

 これは、農業には農繁期と農閑期があって、直雇用では働かせにくいからです。農業実習生は1年単位で契約しますから、暇だからと言って他の農家で働かせることはできませんが実際には「飛ばし」と言って「実習生を貸す」などということが行われていました。これは不正行為であり、見つかって不正行為認定をされれば、実習生受入れができなくなるなどペナルティがありました。
 しかし派遣会社が雇用し農家に派遣するとなれば、これが合法的にできるということになります。

 さらに心配なのは、労働時間に関しては労働基準法適用除外だということです。農業労働者にも労働基準法は適用されますが、農業は特殊だからということで労働時間に関しては適用除外になっています。(ただし、「労働基準法の適用がない労働時間関係の労働条件について、基本的に労働基準法の規定に準拠する」との農水省の通達が出ています。)
 ロボットではあるまいし、週1回の休日や毎日の休憩、8時間労働などが守られなければ人間らしい労働とは言えません。人権侵害が起きないように監視していかなくてはなりません。

厚生労働省から出された指針(2017.12.15)より抜粋
(労働者との雇用契約)特定機関(=雇用主)は、労働者派遣事業を行う本社または直営の事業所において、外国人農業人材を派遣労働者としてフルタイムで雇用し、雇用契約を文書により締結しなければならない
(農家との派遣契約)特定機関は、派遣先農業経営体と外国人農業支援人材に係る労働者派遣契約を締結し、同契約に基づき外国人農業支援人材を当該派遣先農業経営体に派遣することができる
(住居について)特定機関は外国人農業支援人材の住居を確保しなければならない。この場合において、派遣先農業経営体が保有する住居を外国人農業支援人材の住居とすることができる


日系四世を就労者として「特定活動」で受け入れる
~ 「定住者」の二世・三世と一貫性なく条件や制限がいっぱい ~

 法務省は昨年末、日系四世の就労者としての受入れを決め、パブリックコメントを経て18年度中に実施する予定です。
 これまで日系人は「日本人の血を引いている」という理由で、二世・三世には無条件で「定住者ビザ」が与えられてきました。今回の改定では、18~30歳の日系四世について、「特定活動」の在留資格で最長5年の滞在を認めるとしていますが、日本語での会話や読み書きなど一定の語学力(日本語能力試験N4レベル)が要求されます。

 その他、1年をめどに更新の手続きが必要であったり、家族は原則帯同できず、日本国内に親族やホストファミリー、雇用主といったサポーターがいることなど条件がいっぱいです。そもそも、日系四世も「日本人の血を引いている」にもかかわらず、「定住者」の資格があたえられないのでは、制度に一貫性がありません(別図・法務省資料参照)。

 政府は、日系四世への特定活動の在留資格付与を「日本と海外の日系人社会の懸け橋となる人材育成が目的」などと言っていますが、自民党が昨年5月に発表した「一億総括役社会に向けた提言」では、外国人材の活用として日系四世の「活躍」をあげており、今回の制度改定は、この提言に沿ったものであることは明らかです。いい加減にきれいごとはやめるべきです。

法務省資料

法務省資料


本多ミヨ子書記長の「フィリピン研究旅行記」

 「移住労働者の送り出し国であるフィリピンの労働経済事情と労働組合の対応などを調査することになったが、いっしょにどうですか」と声をかけてくださる方があり、喜んで参加させてもらいました。
 昨年11月27日から12月2日まで、研究者2名、弁護士2名、通訳1名と私の総勢6名でフィリピンに行き、5つの団体を訪問したほか、原水禁大会で毎年日本に来ている女性弁護士との懇談もあり、有意義な旅でした。

ドゥテルテ大統領の超法規的殺人を許すな!

 セントロに行った時、「ドゥテルテの超法規的殺人に世界から非難の声を上げてほしい」と要請されました。日本では「麻薬撲滅のため」と報道されていますが、実態はまったく違うとのこと。「麻薬関係者ではない一般市民が犠牲になっています。

 27歳のセントロのスタッフも犠牲になりました。警官の横暴に『何でこんなことをするんだ』とたちはだかったときに銃で撃ち殺されたのです。もっとも若い犠牲者は14歳、21歳の青年もいます。射殺した後で「麻薬関係者だ」というのです。

 世界中で「やめろ!の声を上げてほしい」と要請されましたので、私は12月5日に行われた国際人権デーの総務省前宣伝行動でこの事実を訴え、「日本政府はこんな人権侵害はやめるべきだとドゥテルテ大統領に言うべきです」とマイクで訴えました。小さな国際連帯です。

【訪問先の団体】
○POEA(Philippines Overseas Employment Administration)
 「海外雇用庁」フィリピンの行政機関で、主に海外移住の送り出しに関する業務を担当している。

「OFWは現代の英雄」 介護実習生には「私たちも心配している」

 フィリピンは、OFW(Overseas Filipinos Workers―海外フィリピン労働者)が人口の約10%を占め、海外からの仕送りもGDPの10%を占めている東アジア最大の送り出し国です。「OFWは現代の英雄」と言われているそうですが、英雄とは無縁の日本での実状を知っているだけに「都合よくおだてて」という気もしました。

 POEAでは、日本の介護実習生について話し合いました。私が具体例をあげながら「日本語を初めいろいろな問題が発生すると考えられるのでとても心配しています。どのように考えていますか」と質問すると「私たちも心配しています。しかし日本からの支援のこともあるので・・・。きてほしいと言う国があり、行きたいという人がいる限りは・・・」と歯切れが悪く、送り出し国のジレンマも垣間見えました。

○SENTRO(セントロ:Center of United and Progressive Workers)
 ナショナルセンターの1つで全労連と交流があり、役員が若いのにびっくり

労働法の改善、労働者のための政党を作る、そのために組織を大きしなくては

 一番最初に訪問したのがセントロ、迎えてくれたのは元気いっぱいの若者たち、主に対応してくれた事務局次長は29歳の女性でした。
 自己紹介は「Jです。発電送電関係の労働者の組織化を担当しています」「Nといいます。ファストフード労働者の組織化に係っています」「Rです。交通労働者の組織化を担当しています」などなど、とにかく活動の中心が「組織化」「仲間づくり」にピタッとあっているのです。「組織を大きくしながら力をつけ、いろいろな団体と協力しながら労働法の改善に取り組みたい、労働者のための政党も作りたい」と意気盛んでした。

香港・マレーシアで家事労働者を組織

 香港・マレーシアには多くのフィリピン人が働いています。中でも多いのが家事労働者でセントロはその人たちを組織しています。インターネットを使い香港とスカイプ会議を行いました。
 2006年に設立、組織化の方法は、日曜日に公園や街中や教会に出かけ、家事労働者と見れば話しかけ、リーフと緊急連絡先が書いてあるカードを渡すことを繰り返しました。1人に話しかけ、その1人から4人それがさらに9人と繋がっていく活動を重視しています。繋がった人を対象にセミナーを開き参加してもらい組合に入ってもらいます。組合が行政に悪徳仲介業者を告発し、4社が閉鎖に、63社が何らかのペナルティを受けたこともあります。
 組織化の典型のような活動だと思いました。そしてその力を使って行政を動かしているのもすばらしい!

○LEARN(ラーン: Labor Education and Research Network)
 労働組合を支えている労働教育及び調査機関、日本で言えば労働者教育協会+労働運動総合研究所

組合を作るにはいくつものハードルがあってとても大変!

 ラーンは労働者教育機関ですが、その目的は「労働者を団結させるため」とはっきりしています。そのためにオルガナイザーを養成しここで学んだ労働者がセントロを結成したのです。

 ラーンで聞いた労働組合結成のプロセスは、とても厳しいものでした。労働組合を作りたいと思ったら「組合結成に賛成か」を、その職場の全労働者の51%以上が参加する投票にかけ、その過半数が賛成しなければなりません。会社は当然「投票に参加するな」「やむをえず参加する場合は反対票を入れろ」と圧力をかけ労働者を切り崩してきます。結成が決まったら政府に届出て承認を受けねばなりません。大変!


難民申請者を簡単な審査で振り分けて就労禁止
~ 本来認定されるべき人がさらに排除される恐れが ~

 法務省は、今年1月15日から難民認定申請者の就労許可などを制限し始めました。「日本で働くために虚偽の難民申請をする外国人が急増し、認定審査に支障が出ている」とし、本来の認定審査の前に、申請から2か月以内に簡単な審査を実施、「明らかに難民に該当しない」「再申請の繰り返し」と判定されれば、これまで申請の半年後から原則認めてきた就労が許可されません。
 法務省は、「濫用・誤用的な申請を抑制する」ことが目的としています。しかし、本来認定されるべき人が、排除される危険性があります。

難民条約を極端に狭く解釈して不認定を繰り返す日本政府

 日本は、欧米なら難民として認定されると思われる人まで、不認定にしてきました。政治的意見や宗教を理由に母国で迫害の恐れがある難民について、日本を含む難民条約加盟国は保護する義務を負っています。日本政府は難民条約を極端に狭く解釈し、「政府による迫害がその人に直接降りかかる十分な恐れがあり、その恐れの証明は申請者本人がしなければならない」としています。
 しかし、いのちからがら母国を脱出した難民の中には、迫害の事実を立証できる資料を持たない人が大勢います。たった2か月以内の不十分な審査では、難民に該当する人まで門前払いされる危険性があります。

1万人以上の申請者に対し認定はたった28人、まさに「難民鎖国」

 欧米諸国が毎年、千人、万人単位で難民を受け入れているのに、日本が2016年に認定した難民は1万人以上の申請者に対してわずか28人です。これまでも「難民鎖国」と内外から批判されてきたのに、今回の見直しで、認定者がさらに絞り込まれ、生活するために必要な就労の機会さえもうばわれるとしたら大問題です。

 不認定の理由を聞いてもただ単に「基準に該当しない」というだけで、なぜどこが該当しないのかの説明は拒否されます。あいまいな認定基準を明確にし、不透明な審査を改善して弁護士らの立ち会いを認め、申請者の母国に関する情報を充実させるなどの方が重要です。それを怠っておいて門前払いするのは、難民締め出しの強化にほかなりません。


LUM第17回定期大会開く

 2017年11月12日に定期大会を開きました。議案はすべて満場一致で採択され、新しい役員体制を以下の通り確認しました。その後は楽しく交流し、みんな元気になりました。

2018年度役員

執行委員長   島倉 昌二
副執行委員長  (全国一般)
書記長     本多 ミヨ子
会 計    (書記長兼任)
幹 事     菅沼 櫻子
        田波 紀夫
会計監事    上野 節子
        大角 繁夫
協力幹事    梶  哲弘(全国一般東京地本副委員長)
        久保 桂子(東京地評組織部長)
        小林 雅之(公務公共一般労働組合)
        松澤 秀延(元日本クルディスタン友好協会役員)
        森  治美(全国一般東京地本合同労組書記長)
        山口 文昭(元新聞労連)

 

Pocket